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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第118回  刺し子の見本

刺し子の見本

ずらりと並んだこぎん刺しと菱刺しの見本


 当館3階の郷土学習室「わくわく体験ルーム」」は、各常設展示を巡ってきての最終地点にあたり、ヅグリや福笑いなどの遊具で遊びながら、昔の暮らしを体験できるコーナーである。クイズラリーの答え合わせをすると、プレゼントをもらえるカウンターもあり、休日ともなると子供たちが楽しんでいる様子をよく目にする。
 この学習室の東側壁面に、本県の庶民文化を伝える代表的なものとして、コギンと菱刺しの見本が展示されている。「カチャラズ」「ベゴノクラ」など各種の紋を手のひら大の地布に刺したもので、コギン約50、菱刺し約20を台紙に貼り付けて掲示したものである。これらは、かつての解説員たちが一針一針刺して自作したもので、地元の女性たちが習い伝えた手業を自ら追体験しようとした、解説員たちの思いを感じさせてくれる資料でもある。
 テキスタイル・デザインの人気が高まってきたころ、この見本を借用したいという要望があったが、お断りしたことがある。これほどの数をそろえた刺し子の見本が空白となったとき、ほかに代替できるものがないからである。
(県立郷土館学芸課長 古川実)
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by aomori-kyodokan | 2015-10-29 11:16 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第117回 ニホンザル(ホンドザル)

雑食の食いしん坊、食害も

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県立郷土館に展示されているニホンザルの剥製


 ニホンザルは,日本にのみ生息する固有種である.本州,四国,九州や屋久島,金華山島などに生息し,青森県が北限である.ニホンザルは更に本土に生息するホンドザルと屋久島のヤクシマザルの亜種に分かれている.青森県の個体は亜種ホンドザルである.
 青森県では,下北半島,津軽半島,白神山地とこれに連なる地域の三つに生息域に大きく分かれている.下北半島の集団は北限にあたり,天然記念物「下北半島のサルおよびサルの生息北限地」に昭和四十五年十一月十一日に指定された.また,平成二十二年に改訂された,青森県レッドデータブックでは下北半島と津軽半島の個体群を地域限定希少野生生物に指定した.
 広葉樹林に群れをつくって遊動生活をしているが,中にはハナレザルやヒトリザルと呼ばれる単独で行動する個体も見られる.雑食性で木の実,果実,葉などの他に昆虫や小動物も捕食する.農作物の食害も見られ問題となっている.
 青森県下北半島には古くから地元の研究者を中心に多くの調査研究がなされている.特に,個体数や群れの移動の調査など行われ多くの成果を上げている.
 郷土館の自然展示室にも,青森県産のホンドザル(事故死)が展示されている.
(県立郷土館学芸員 山内智)
by aomori-kyodokan | 2015-10-22 11:22 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第116回 算額

数学の良問 寺に奉納

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数学の問題が記された算額(八戸市指定文化財、南宗寺蔵)


 十月も半ばになり、受験生の皆様はいよいよ本格的にシーズン到来となりました。
さて、今回紹介するのは算額である。これは八戸藩の和算の大家である神山由助の孫、久明が祖父の三十三回忌にあたる明治二十五年に八戸市の南宗寺に奉納したものである。
学には何が書いてあるかというと、数学の問題である。一問目を要約すると、「直方体があり、体積は140、高さは奥行きより2長く、高さと横の和が9である。三辺の長さを求めよ。」とある。三次方程式をつくり、解の公式を用いてようやく答えが出せる高校数学レベルの問題である。
数学の良問を額に入れて奉納していたのである。現在、テストの問題を良問だと、額に入れて部屋に飾っている生徒はおそらくいないだろう。我々の先人が持っていた学問に対する真摯な姿勢を改めて学びたいものである。
(県立郷土館学芸主査 伊藤啓祐)
by aomori-kyodokan | 2015-10-15 11:26 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第115回 手返 

慎重な扱い方教える名品

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 青森県立郷土館でおこなっている出前授業「古い道具と昔の暮らし」はとても人気である。子供たちは、衣・食・住3つのコーナーに分けてある道具の解説を聞き、体験活動をおこなう。今回は「衣」のコーナーの資料である冬の手袋「手返」(てっかえし)を紹介する。冬の手袋「手返」は津軽弁では「てけし・てもっこ」とも呼ばれている。
近頃は、手袋というと毛糸や木綿・布などでつくられたものを思い浮かべる人が多いと思うが、私たちが出前授業で取り扱っている手袋は、なんとワラを編んで作られている。写真のとおりきれいに規則正しく編んである。子供たちにてけしを手袋だよと差し出すと「えー本当?」と驚く。流石は子供達。「それをはいてもいいの?」と聞いてくる。「ごめんね。はけないんだ」と一言。本当は、「はいてもいいよ」と言いたいのに言えない現実。「どうしてはけないの」と子供達。「てけしを修理できる人がなかなかみつからないんだよ」と言うと、「てけしはとても大事な資料なんだね。そのほかの資料もとても大事なんだね」と子供達は納得し、てけしはもちろんその他の資料を大事に丁寧に扱うようになる。物を大切に扱う気持ちを子供達に与えてくれる「てけし」は郷土館の名品にふさわしいのではないだろうか。子供達には、人間の気持ちを大切にしてくれる人になってほしい。冷たさを温かさにかえる「手返」のように・・・。
(青森県立郷土館 学芸主査 伊丸岡 政彦)
by aomori-kyodokan | 2015-10-08 13:22 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第114回 イモガンナ

余さず使うための知恵

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民俗展示室に展示中のイモガンナ


 下北地方には、ジャガイモの多様な加工法や調理法が伝えられている。イモが盛んに利用された背景には、水稲の栽培に不向きな気候的・地理的条件があった。
利用の多様性を支える道具のひとつに、「イモガンナ」がある。人々は「クズイモ」と呼ばれる小さなイモも、粗末にはしなかった。箱状の部分にクズイモを詰め、前後にスライドする。下部に組み込まれた刃でイモがスライスされる。
水に浸けると「ハナ」(でんぷん)が沈殿する。ハナは食用にする。ハナの抜けた「イモカス」も捨てない。干して粉にし、モチやダンゴにして食べた。
 「へたて、なも食(く)のネェものよォ。さらして乾がして、ウスでハダいで、シノでトシて(フルイに通して)。バゲになれば、オツユの実。汁ダンゴってな。ツルつだナベコさ掛げどぐべ。それさフトツずづへで」(むつ市川内、87歳女性)。イモのカスと侮ってはいけない。これが意外においしい。
 ハナをとるには、すり潰して水に浸す方法もある。昭和40年代頃から、家庭用のジューサーミキサーを使ってすり潰すようになったと語る人もいる。道具は変わりつつ、イモの多彩な利用法は受け継がれてきた。
ただ時を経るに従い、イモカスを捨ててしまう場合が多くなった。確かに「カス」まで食べる必要はない時代かもしれない。だが、余すことなく利用する知恵や技術や精神も失われてしまうのは惜しい。
(県立郷土館研究員 増田公寧)
by aomori-kyodokan | 2015-10-01 16:04 | ふるさとの宝物