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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第96回 シラガミクワガタ

植物で唯一「白神」の名
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県立郷土館に展示しているシラガミクワガタのレプリカ


 この花は、山地の岩場に生えるオオバコ科の多年草で、初夏にきれいな紫色の花を咲かせる。地下茎から数本の茎が伸び、高さは20cm前後になる。山地といっても、どこの山地でも自生しているのではなく白神山地にのみ自生する固有種である。それが「シラガミクワガタ」という名前の由来となっている。
 このシラガミクワガタは、青森県立郷土館が開館直後だった1973年頃、当時学芸課研究員だった原子一男氏が林道沿いで発見した。当時はミヤマクワガタの品種のミチノククワガタであるとされた。それから20年経ち、1993年にミヤマクワガタの変種のシラガミクワガタと発表・命名されたのだ。ミチノククワガタと比べると花が大きく葉の縁のギザギザ(鋸歯、きょし)が規則的になっていることで区別できる。
 シラガミクワガタは、青森県のレッドデータブック(2010年改訂版)で重要希少野生生物に区分されている。採取などにより激減しているためである。「白神」の名を冠しているこの植物にいつまでも自生していてほしいと願うばかりである。 
 なお、青森県立郷土館の自然展示室にはいつでも見ることができるようレプリカを展示している。
(県立郷土館 主任研究主査 豊田雅彦)
by aomori-kyodokan | 2015-05-28 15:01 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第95回 縄文式注口土器

「ハレ」の器 中身は酒?

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縄文式注口土器(岩手県二戸市出土、県重宝)


  「注口土器」は字面どおり注ぎ口が付いた土器のことである。青森県を含む東北地方で最も多くつくられたのは縄文晩期亀ヶ岡式、特にその前半期である。亀ヶ岡式では丸い胴がつぶれ、そろばん玉のような形をとる。現在の急須をイメージさせる形態で、液体を注ぐものと考えられている。
亀ヶ岡式土器には文様で飾られた、あるいは光沢を放つほど磨き上げられた精製土器と、縄文だけを付けた粗製土器がある。粗製土器は数も多く「ケ」の器、精製土器は数も少なく、「ハレ」の器と考えられている。
注口土器に粗製土器はないからハレの器である。注口土器から注がれた液体の中味を科学的に証明することは難しいが、個人的には酒であって欲しい。亀ヶ岡式の注口土器は普通、径10cmから20cm前後、本品は径28cmほどもあり、大型である。多くの人が集まるマツリの席で酒がふるまわれたのだろうか、そんな想像を禁じ得ない。
(青森県立郷土館 主任学芸主査 中村哲也)
by aomori-kyodokan | 2015-05-21 12:56 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第94回 五つ珠そろばん

裏に学校名の焼き印

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五つ珠そろばん。上は「追子野木校」(写真右上)、下は「尾上小学」(写真右下)の焼き印が裏側にある


 そろばんは、東南アジア諸国で使われている計算器具で、日本には室町時代末期に中国から伝わったという。中国では重さの単位に16進法が採用されていたことから、伝来当時は五珠(ごだま)2つ、一珠(いちだま)5つの五つ珠そろばんが使われていた。江戸時代中期、弘前藩の宝暦改革に登用された儒学者乳井貢(にゅういみつぎ)は、算術学にも精通し、その著『初学算法』で「下の玉一つは末代遊びものにて用にたたず」と説いて四つ珠(よつだま)そろばんを提唱した。だが、明治時代に入っても五珠1つ、一珠5つの五つ珠が普及した。
 さて、寄贈者の話によれば、この二つのそろばんは黒石市立追子野木(おこのき)小学校の旧校舎解体にともなって放出されたものだという。裏にはそれぞれ「尾上小學」「追子野木校」の焼き印がある。1956(昭和31)年10月1日に追子野木地区が尾上町から黒石市に編入合併された史実を物語るものである。37(昭和12)年4月に尾上村と金田(かなた)村が合併したのにともない、尾上尋常高等小学校は金田尋常高等小学校(現平川市立金田小学校)に併合されるとともに、追子野木尋常小学校が開校した。
 そろばんを使った計算を珠算という。珠算が授業に取り入れられたのは戦前のことで、38(昭和13)年に文部省の国定教科書により小学4年生の算術の授業に暗算と珠算も指導するようになり、この時に使わせた四つ珠そろばんが、その後普及することになった。
 県立郷土館で開催中の企画展「写真展思い出のふるさと~昭和戦後のまち・むら・交通~」で展示中である。(県立郷土館学芸課副課長竹村俊哉)
※ この企画展はすでに終了しております。
by aomori-kyodokan | 2015-05-14 09:38 | ふるさとの宝物