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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第70回  洗濯板

溝の曲線に先人の工夫

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 洗濯板は18世紀後半にヨーロッパで発明され、明治中期に日本に伝わって使用するようになった。それ以前の洗濯がどうだったのかというと、水でぬらした布を「もみ洗い」「足で踏みつける」「岩などにたたきつける」などの方法が一般的だった。洗濯板はその後、自動洗濯機が普及するにつれて使われなくなっていった。
 さて、洗濯板の「溝」に注目してほしい。溝が直線になっている洗濯板もあるが、写真の洗濯板は曲線になっている。この曲線には意味がある。「表」(写真左)は、石鹸を使った「洗い」に適している。上部に石鹸を置き、石鹸を少しずつ使って布を洗っていく。そうすると溝が石鹸の泡を受け止めるのだ。その泡を次の布・その次の布にも使う。少ない石鹸でたくさんの布を洗うことができる。「裏」(写真右)は「すすぎ」のときに使う。この形だと泡や汚れた水は下に落ちていく。きれいな水をどんどん使うと布をすすぐことができる。洗濯板の「溝」一つにも、先人たちの知恵と工夫が隠されている。
 小学生に行っている郷土館の出前授業「古い道具と昔の暮らし」では、ただ古い道具を紹介して終わるのではなく、先人たちの知恵や工夫を伝えるように心がけている。
(県立郷土館 主任研究主査 豊田雅彦 )
by aomori-kyodokan | 2014-10-30 13:42 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第69回  ツガルクジラの化石

鰺ヶ沢で採集、不明点も

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ツガルクジラの化石。頭の一部で、上面を撮影。左側が前


 「これはクジラの化石です」と言われても、ちょっと見ただけではクジラのどこの部分の化石か見当がつかない。頭の一部であるが、大きさは30センチ×20センチ程度と小さく、イルカと同じくらいの大きさだと考えられている。
 この化石を研究した東北帝国大学(現東北大学)教授の松本彦七郎は、大正15年(1926)に発表した論文で「Idiocetus tsugarensis(イディオセタス ツガレンシス)」 と命名。この学名から「ツガルクジラ」と呼ばれている。現在、国立科学博物館が所蔵し、当館で展示しているのはその複製。
記録によると化石の採集年は1892(明治25年)、採集地は西津軽郡赤石村赤石谷である。赤石村は現在の鰺ヶ沢町赤石地区だが、赤石谷の場所や国立科学博物館に化石が収蔵された経緯等よくわかっていないことも多く、調査を進めている。
(県立郷土館主任学芸主査 島口 天)
by aomori-kyodokan | 2014-10-23 17:35 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第68回  狩りをする縄文人

狩りをする縄文人

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縄文人が荒々しい姿で描かれたパネル


 この絵は考古展示室の縄文時代コーナーを飾るパネルである。正式なタイトルはない。ご覧になってどのような印象をお持ちになるだろうか。渦巻く情念?闘争心?腰に毛皮を巻いた半裸の男達が手に弓矢や槍を持って雄叫びを上げている。1973年、開館時につくられたものだ。
当時、縄文時代は日々の食料にも汲々(きゅうきゅう)とする貧しい狩猟採集経済の段階として理解されていた。この絵には切迫した縄文人の生活と心情が表現されているのだと読み解くこともできる。
昭和50年代以降、増大する開発事業とともに埋蔵文化財の発掘調査件数は飛躍的に増加した。多様な生業の証拠、大型の建物跡や大規模な集落、様々な装身具や高度な技術でつくられた漆製品など、資料が蓄積されるのに伴って縄文時代のイメージは書き換えられ、いまや縄文人は豊かな狩猟採集民となった。この絵は現在の縄文時代の理解からすると時代遅れかもしれないが、縄文時代のイメージの変化を物語る貴重な資料でもある。
(県立郷土館主任学芸主査 中村哲也)
by aomori-kyodokan | 2014-10-16 17:32 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第67回  オオゴキブリ

きれいな森に住む希少種

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森林性のオオゴキブリ


 ゴキブリは誰でも知っているが、その色や体型、歩き方等から嫌われる昆虫の代表である。しかし、ゴキブリの祖先は化石などから3億年前の古生代石炭紀にはすでに地球に生息していたことが確認されている。日本国内からは52種7亜種のゴキブリが知られているが、青森県内にはオオゴキブリ、ヤマトゴキブリ、クロゴキブリ、チャバネゴキブリの4種類が生息している。
 この中のオオゴキブリは、青森県内での記録は世界遺産地域周辺地区である十二湖から最初に確認された。他の三種類とは異なり森林性で人と生活を共にすることは殆どない。
体長が約4cmもあり、頑丈な虫で体は厚く硬く、体によろいを着たようである。森林の朽ち木の中に生息するため、成虫は翅(はね)の先端がすり切れ短くなった個体が多く見られる。
朽ち木は内部がスポンジ状で適度の湿り気が必要だが、腐り具合や堅さ、湿り具合などに好みがあるため、森林内の全ての朽ち木に生息するわけでなく、限定される。生息地も少なく、県内では採集困難な昆虫である。青森県レッドデータブックでは稀少野生生物に指定されている。
 ゴキブリというと汚い昆虫と直感的に思われるが、オオゴキブリは森林性で汚れも少なく、オオゴキブリの棲む森は、環境の条件の良い森林で、保全管理の良い森でもある。
(県立郷土館主任学芸主査 山内智)
by aomori-kyodokan | 2014-10-09 17:28 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第66回 パン券

物資統制下の配給切符

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戦後配られたパンの配給切符。10枚つづりになっている。


 「配給制度」と言えば、戦時中の物資統制をすぐに思い浮かべるであろう。1937(昭和12)年7月の盧溝橋(ろこうきょう)事件を契機に日中戦争が始まり、同年9月に公布された輸出入品等臨時措置法にもとづいてさまざまな物資統制がおこなわれた。
戦後まもなく、政府は物資統制の大幅な廃止を検討したが、連合国最高司令官総司令部が統制の継続を指示したため、46(昭和21)年3月の物価統制令と同年10月の臨時物資需給調整法により、生産財及び消費財の配給制度は続けられた。
 配給機関として石炭、石油、肥料、酒、食料品、飼料、食糧などの公団が設置された。写真はパンの配給切符である。裏面には「此の券をパン代位配給所に御持参の上パンを御買求めください」をはじめ、6項目の注意事項が書かれており、パンを希望しない場合は原料の粉の配給を受けることもできた。また、裏面の各片に交付配給所名の捺印がないものは無効となり、このパン券には「食糧配給公団青森県七戸配給所」の捺印がある。現在開催中の特別展「発酵食品パワー」で展示中である。
(県立郷土館学芸課副課長 竹村俊哉)

※ 特別展「発酵食品パワー」は、2014年秋好評のうちに終了しました。
by aomori-kyodokan | 2014-10-02 11:59 | ふるさとの宝物