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青森県立郷土館ニュース

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カテゴリ:ふるさとの宝物( 135 )

ふるさとの宝物 第136回 郡場寛のバイオリン

和洋幅広く音楽に親しむ

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郡場寛が愛用したバイオリン


 郡場寛は、青森市出身の植物学者である。東京帝国大学大学院でネジバナの花序(花の付き方)に関する論文により、理学博士となった。
 その後、郡場寛は、札幌にあった東北帝国大学農科大学(現北海道大学)、京都帝国大学の教壇に立った。その間、欧米留学や世界各地での調査を行い、様々な学術会議の委員を務めた。1942(昭和17)年に京都大学理学部長を退職し、陸軍司政長官としてシンガポールの植物園長に赴任。植物園では日本軍捕虜となったイギリス人の元園長らと協力して研究を続けた。戦後、彼は54(同29)年から弘前大学学長を勤め、在任中の57(同32)年に生涯を終えた。
 生前の彼は、スキーや音楽など、非常に多くの趣味を持っていたことが知られている。当館所蔵の遺品のなかには、バイオリンのほか、膨大な数のレコード、横笛、尺八などが含まれ、音楽については和洋幅広く親しんでいたことがうかがわれる。
 現在、県立郷土館で開催されている新収蔵展では、郡場寛の使用したバイオリンのほか、いくつかの遺品を紹介している。
(県立郷土館主任学芸主査 佐藤良宣) 
by aomori-kyodokan | 2016-03-10 09:58 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第135回 ムラサキヤシオツツジ

名前の通り 花鮮やか

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ムラサキヤシオツツジの標本


 ムラサキヤシオツツジ(Rhododendron albrechtii Maxim)は、ムラサキヤシオ、ミヤマツツジともよばれるツツジの仲間でである。
「ムラサキヤシオ」は漢字で「紫八塩」、または「紫八汐」「紫八染」とも書き、回数を重ねて紫色の染汁に漬けてよく染め上げたという意味である。
花の色はその名の通り鮮やかな紫色で、春になると葉が出てくるのと同時、または葉より早く花を咲かせる。樹高1~3mの落葉低木で北海道、東北地方、中部地方の主に日本海側に分布している。
 ムラサキヤシオツツジの標本は青森県立郷土館自然展示室「白神山地の植物」のコーナーに展示している。そのほかにも白神山地由来の植物の標本として20種類ほどを展示している。来館した際にはご覧いただきたい。
(県立郷土館主任研究主査  豊田 雅彦)
by aomori-kyodokan | 2016-03-03 09:53 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第134回 石製垂飾品(風韻堂コレクション)

サメの強さにあやかる?

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右はサメの歯を模した縄文晩期の石製垂飾品
(長さ8.6cm。県立郷土館所蔵。)
左の3点はサメの歯
(上2点は県埋文センター所蔵。下は板柳町教育委員会所蔵。)


 石製垂飾品(せきせいすいしょくひん)の全体の形は二等辺三角形で、底辺が湾曲している。一方は欠失しているが、底辺の両側に穿孔(せんこう)されていたらしい。側面には細かな刻みがある。これはサメの歯の形を真似た垂飾品と考えられる。
実はサメの歯は日本各地の縄文遺跡から見つかっている。青森県では早期の終わりから晩期のものまであり、中には孔が開けられ、垂飾品として用いられたものもある。サメの種類はホオジロサメやアオザメなど暖海性のサメがよく知られている。
左側の3点は実際に遺跡から出土したサメの歯で、上2点が六ヶ所村富ノ沢(2)遺跡、下が板柳町土井Ⅰ号遺跡のもの。なぜ海岸線から数十㎞内陸にある土井Ⅰ号遺跡からサメの歯が出土したのだろうか。なぜ暖海性のサメの歯が青森から出土したのだろうか。
サメは海で最強の生き物であり、縄文人は、その一部を身につけることで強さを身にまとうことができると信じたのかもしれない。だからこそサメの歯が流通し、本物の歯だけでなく、石製の装飾品もつくられたのだろう。
(県立郷土館主任学芸主査  中村 哲也)
by aomori-kyodokan | 2016-02-25 10:48 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第133回 原油

かつて県内でも採掘

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石油採掘跡地を示す看板(五所川原市前田野目)五所川原市
前田野目産「原油」



 写真のビンの中の黒い液体は、五所川原市で採れた原油。県内でも石油(原油)が採れるのである。採取時には水や泥が混じっていたが、それを取り除いてある。この場所では1905(明治38)年に手掘りによる採掘が始まり、明治末期にドラム缶で約50本の石油がくみ上げられた記録がある。跡地には、今でも「油発掘跡」と書かれた看板が立っている。
 津軽山地の西側及び東側では、沢沿いの崖に油がにじんでいるようすや、沢水の表面に油膜が見られることがある。この地域では、1921(大正10)年頃から、石油会社や個人によって石油の試掘が行われた。第二次世界大戦中には、大釈迦‐鶴ヶ坂間のトンネル付近において深度180mの試掘が行われ、ドラム缶30本ほどの原油が採掘された。津軽地域で採れる石油(原油)は、新潟県・秋田県の油田で採れるものと全く同じだといわれるが、産出量が少ないためか石油開発には成功していない。
(県立郷土館学芸課副課長 島口 天)
by aomori-kyodokan | 2016-02-18 08:57 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第132回 南部下北半島真景図・津軽外ヶ浜真景図

北方警備の要所描く

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南部下北真景図「蛇浦のほとり切通の望」


南部下北半島真景図・津軽外ヶ浜真景図は、江戸時代の絵師大野文泉が描いたもので、2巻に分かれ、それぞれ16枚の絹本彩色画で構成されている。
 絵師の大野文泉は白河藩士で藩主松平定信に仕えた。彼は文化4年(1807)8月に奥州・羽州方面の古社寺・古武器と真景(土地の景観)の写生を命じられ、仙台~南部~秋田をめぐり、中尊寺の古物、遠野南部家や櫛引八幡宮の甲冑を写生した。文泉に同行した田井元陳(定信の側近)が書いたと思われる「ふところ日記」(東北大学附属図書館蔵)の末尾には、櫛引八幡宮以降の行程が列挙されていて、下北半島を訪れた後に津軽半島を回ったことが確認できる。
文化4年は、4月に幕府が箱館奉行及び弘前・盛岡両藩に宗谷防衛を指示し、5月にはロシア船の利尻島への進入に対して奥羽諸藩に蝦夷地出兵を命じるなど、ロシア船の来航に対する北方警備が強化されていく時期である。描かれた場所のほとんどが津軽海峡に面した下北半島及び津軽半島の沿岸部であり、当時の情勢を併せ考えると非常に興味深い。
 また、アットゥシ(アイヌの衣服)を着た人物がたびたび描かれていることから、描かれた地域におけるアイヌ民族との交流を考察する上でも有益な情報を提供する資料である。3月3日から開催の新収蔵展で公開予定だ。
(県立郷土館学芸課副課長 竹村俊哉)
by aomori-kyodokan | 2016-02-11 09:08 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第131回 庚申様の柱

津軽の特色ある習俗

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神名などが墨書された庚申(左)と二十三夜の柱(右)


 写真の庚申(こうしん)様掛図の両側に立つ柱は、五所川原市のショッピングモールが見えるバイパス沿い、唐笠柳町会が祀る庚申と二十三夜の石塔の後ろに立てられていたものである。柱の先端に松の枝、その下に山と日月を描いた横板を取り付け、左側の庚申には「猿田彦大神」「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」、右側の二十三夜には「月読命(つくよみのみこと)」の神名などが、柱面に墨書きされている。
 庚申の日の夜は人々が集まり、寝ずに身を慎み時を過ごすという庚申信仰は、全国的によく知られている。庚申の日は年に6回あるのが普通であるが、7回の七庚申、5回の五庚申の年は、七庚申の豊作、五庚申の不作という俗信などもあり、特別な祭事をすることがあった。
津軽地方においては、そのような年にツカなどと呼ぶ標柱を立て庚申を祀っており、特色ある習俗とされる。唐笠柳では現在、毎年柱を取り替え庚申と二十三夜を同日に祀っているそうで、かつての習俗の変化などが推察される。
 本日は二十四節気の立春。この日を新年の始まりとする場合もあるので、あらためて申年にちなみ、申と関わりがあるとされる庚申様の資料を紹介した。
(県立郷土館学芸課長 古川実)
by aomori-kyodokan | 2016-02-04 09:41 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第129回 ティーカップ

70年前の小さなおもちゃ

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小さなティーカップ


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皿の裏には「占領下の日本製」を意味する文字が記されている


 クリスマスにお正月が終わりました。子供たちはお気に入りのおもちゃを手にして、笑顔になったことでしょう。
さて、写真のティーカップは約70年前に作られたおもちゃです。隣に置いたクリップと比較してもらうとわかるように、皿の直径は3.9㎝、ティーカップの高さは1.7㎝の非常に小さい物です。皿の裏には「MADE IN OCCUPIED JAPAN(占領下の日本製)」とあり、日本がアメリカの統治下にあった1945~52年の間に作られたおもちゃであることがわかりました。
日本のおもちゃは占領軍による玩具の輸出奨励策によりアメリカ向けに輸出され、おもちゃは日本の貿易を支える産業の一つとなりました。かつて軍備に利用された材料がおもちゃに加工され、アメリカの子供たちを笑顔に、その外貨で日本は食料品を輸入し、日本の子供たちが笑顔に、おもちゃはいつの世も子供のための物でありました。
現在、青森県立郷土館では企画展「大中小展」を開催しております。写真のティーカップのセットの他、さらに小さいドールハウス用のティーセット、普段使うティーカップが展示されていますので、その大きさの違いも是非ご覧いただきたい。
(県立郷土館学芸主査 伊藤啓祐)
by aomori-kyodokan | 2016-01-21 10:04 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第128回 自在鉤

鍋と火の距離を調節

県立郷土館の常設展示にある自在鉤
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 自在鈎は囲炉裏などの上につり下げて、鍋ややかんを掛けて使う道具である。ちなみに鈎とは、金属をL字に曲げたものや先のとがっている部分のことであり、以前紹介した天秤棒や鈎燭にも使われていた。
自在鈎は筒と棒と横木でできている。筒の中に棒を入れ、そこに鍋をかけると、横木との摩擦で棒が落ちずに固定される。あとは好みの長さに棒を上げ下げすればよい。
 鍋に入っている料理を温めたいときは、自在鈎の棒を長くして囲炉裏の火に近づけて温める。逆に火力が強い場合は、棒を短くして火から遠ざける。現在は、IH調理器具やガスコンロのつまみを調節するだけで火加減を調整できるが、昔は自在鈎の棒の長さを調節して火加減を調節していたのである。 県立郷土館で行っている「出前授業」でも紹介しており、子どもたちの興味を引く道具である。子供達に自在鈎を体験させると一生懸命に板を動かし仕組みや工夫について理解する。まさしく自在鈎は道具の工夫を発見する楽しさを与えてくれる名品である。
(県立郷土館学芸主査 伊丸岡政彦)

by aomori-kyodokan | 2016-01-14 10:35 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第127回 貝層の地層剥ぎ取り

発掘調査後も観察可能

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 写真は、1991年に県立郷土館が国史跡七戸町二ツ森貝塚の発掘調査を実施した際に作成した地層断面のはぎ取りである。はぎ取りとは、貝塚などの地層断面に特殊な糊(のり)を塗り、その上に布を貼って地層を構成する土と貝を文字通りはぎ取ったものである。
この貝塚は、縄文時代中期後半(約4500年前)の人々が利用した貝殻などが堆積したもので、厚さが80cmある。はぎ取りをみると、貝の種類はヤマトシジミ・マガキ・ハマグリなどの二枚貝が多く巻貝が少ないこと、貝殻のほか魚骨やシカやイノシシなどの獣骨、土器や石器も混じっており、さまざまなものが貝塚に捨てられていた様子がうかがえる。さらによく見ると、貝殻は種類ごとにまとまりをもって層をなしているようで、一定期間集中して特定の貝を採集していた可能性も考えられる。
本来、地層の重なりは発掘調査時にしか見られないが、地層をはぎ取ることで調査後にも地層観察が可能になる。このように、はぎ取ることは貝塚の様相を探る上で有効な方法である。
(県立郷土館主任学芸主査 杉野森淳子)
by aomori-kyodokan | 2016-01-07 08:43 | ふるさとの宝物

ふるさとの宝物 第126回 シメナワ

丹精込めて手作り

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大・小のシメナワ


 年の瀬を迎える町に市が立ち、大勢の人々が繰り出す光景も、今は昔。昨年末、青森市中心街でみられたシメナワ(しめ飾り)売りの露店は、わずか5軒ほどだった。
シメナワを商うのはいずれも同市郊外に位置する駒込(こまごめ)集落の人々。シメナワはみな売る人の手作りだ。「(当時流行の)マント欲しくてさ。小遣い稼ぐのに始めだんだ」そう語るのは、当地で60年以上シメナワを商う武田まちゑさん(82)。「5~6銭でも売れば、売れだなって。あずまし正月越すにいってな」
自家用車もない時代。駒込を午前3時に出発し、片道6㎞の道を中心街まで歩いて通った。背負える量を売るだけの、ささやかな商売。それが、昭和40年代になると、転機を迎える。徐々にシメナワの需要が高まり、集落をあげて大量に生産されるようになった。「駒込しめ縄組合」の組織のもと、北海道にまで輸出され、材料のスゲが足りず「ホガムラ(他村)まで刈(か)に行がねばねえ」ほどだったという。
スゲの栽培を含めると、シメナワづくりは丸1年がかりの作業。炎天下の刈り入れから選別、乾燥など、素材の準備だけでもかなりの重労働だ。まちゑさんが1年かけ丹精込めてこしらえたシメナワが、今年もまた露店にならぶ。
(県立郷土館研究員 増田公寧)
by aomori-kyodokan | 2015-12-24 09:47 | ふるさとの宝物