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青森県立郷土館ニュース

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青森郷土見聞録 第18回 盆の飾りと供えもの⑤ カラフルな下げ菓子  野菜や果物の代わり お盆とうろう

 盆の墓前や仏壇につるして飾るためのユニークな菓子がある。「とうろう」と呼ばれる極彩色の最中(もなか)だ。飾り方の一例は7月29日付の本連載で紹介した。筆者の実地調査では、北海道から青森(下北・津軽)、秋田、山形(庄内)で用いられていて、秋田では「とろんこ」、北海道では「つるし」などとも呼ばれる。

 「とうろう」の形は、なす、ぶどうなどの季節の産物から、釣鐘、仏像まで、製造元と流通域により差がありバラエティに富む。

かつて製造していた秋田の職人によれば、当初は野菜や果物の形が主流だったという。
山形では「下げもの」といって、季節の産物をかたどった打菓子(粉菓子)をつるす。
青森の職人によると、昔は煎った大豆が中に一粒入っており、振るとカラカラと鳴るので子どもに喜ばれたという。

 これらのことから「とうろう」は、野菜や果物などの供物代わりに用いられる菓子であること、最中はそのバリエーションの一つであること、もとより食べること以外の意味をあわせ持つ菓子であったことなどがわかる。
 墓前や仏壇を美しくにぎやかに飾り、盆に来る霊をもてなす気持ちが、極彩色の派手な色使いや形態の多様化を促したのだろう。

(青森県立郷土館学芸主査・増田公寧)
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写真:盆の下げ菓子。左上から時計回りに北海道・青森・秋田・山形の一例(筆者収集)。

お盆とうろう、下げもの等についてもっと詳しく知りたい方は……
「青森県上北・下北地方の盆棚」(青森県立郷土館研究紀要第45号)をご覧ください。

当ブログ ふるさとの物語 第121回「お盆のとうろう(トウロウ)」もあわせてご覧ください。



by aomori-kyodokan | 2021-08-19 12:00 | 青森郷土見聞録
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