お盆の時期、墓前に供えた食物を親族が分かち合い、和やかに飲食するすがたは、青森に住む私たちにとってはなじみの光景である。とはいえ、近年はオヤツを囓るとか缶ジュースを啜るといった程度で済ませる場合も多くなった。
いっぽう、今も盛大に墓前での飲食を楽しむ地域がある。平内町(ひらないまち)の山口集落である。13日の夕方、大きなレジャーシートに保冷ボックス、カセットデッキを携えた多くの家族づれが、村はずれを目指して歩いてゆく。ピクニックかと思いきや、行き先は集落の共同墓地だ。
一同参拝ののち、宴が始まる。墓前に広げたシートに車座になり、重箱のご馳走をつまみながら老若男女が盃を傾けるさまは、花見の賑やかさだ。「この墓の下に先祖入ってるわげだ。一緒に食べよう、飲もうって。そういう気持ちで(楽しんでいるんですよ)」(奈須下繁さん・1944=昭和19=年生まれ)。亡き人との宴は、かつては日が落ちるまで続いたという。
お盆における墓前飲食の習俗は、青森や秋田などの北東北と、熊本や鹿児島などの九州南部にみとめられる(注1)。両地方とも、墓地での華やかな宴に象徴されるように、遺体埋葬地を忌避すべき場所と捉えないこと、屋内よりも墓地という屋外が祭祀の場として重視されること、本仏・新仏・無縁仏を区別してまつらないといった点で、古い時代のお盆のすがたを示していると考えられる。
(青森県立郷土館学芸主査・増田公寧)
注1)関沢まゆみ2013「『戦後民俗学の認識論批判』と比較研究法の可能性」
写真:墓前に集い飲食を楽しむ山口集落の人々=2019年8月筆者撮影
青森のお盆の祭祀装置や供物等についてもっと知りたい方は……
「青森県下北・上北地方の盆棚」(青森県立郷土館研究紀要第45号)をご覧下さい。