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ふるさとの物語 第149回 天然氷と機械氷  環境恵まれ 並行生産も

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 氷には、冬の寒さを利用して作る「天然氷」と、工場で作る「機械氷」がある。本県で初めて機械氷を製造したのは、去る2月18日に創業100年を迎えた青森製氷株式会社である。
 機械製氷会社の登場は、衛生やコスト、安定供給といった面で本県の氷業界に画期をもたらした。1920(大正9)年の創業は、東京で日本人資本の機械製氷が始まった1884(明治17)年から約40年後。水産物の取扱量が多い本県で、氷は冷蔵用として需要が大きかったにもかかわらず、利点の多い機械製氷の導入が長らく行われなかったのはなぜだろう。
 理由の一つは、天然氷が豊富だったことにあると考えられる。県内では明治期以降、函館からの移入に加え「陸奥氷」「千曳(ちびき)氷」など各地の天然氷や貯蔵雪が利用されていた。青森製氷株式会社でも、機械氷と並行して天然氷の生産をおこない、それは昭和30年代初頭まで続いた。
 青森市近郊に点在した採氷池の一つが、三内(同市)にある笹森沼。かつて青森の町に「三内の清水売り」が出た時代もあった。良質な天然氷を豊富に生産し続けられたのは、厳しい寒さと澄んだ空気、そしてきれいな水に恵まれた青森だからだろう。
(県立郷土館学芸主査・増田公寧)

写真:笹森沼で採氷(1954年、青森製氷提供)


by aomori-kyodokan | 2020-02-27 12:00 | ふるさとの物語
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