人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

青森県立郷土館ニュース

kyodokan.exblog.jp

ふるさとの宝物 第95回 縄文式注口土器

「ハレ」の器 中身は酒?

ふるさとの宝物 第95回 縄文式注口土器_b0111910_13531765.jpg
縄文式注口土器(岩手県二戸市出土、県重宝)


  「注口土器」は字面どおり注ぎ口が付いた土器のことである。青森県を含む東北地方で最も多くつくられたのは縄文晩期亀ヶ岡式、特にその前半期である。亀ヶ岡式では丸い胴がつぶれ、そろばん玉のような形をとる。現在の急須をイメージさせる形態で、液体を注ぐものと考えられている。
亀ヶ岡式土器には文様で飾られた、あるいは光沢を放つほど磨き上げられた精製土器と、縄文だけを付けた粗製土器がある。粗製土器は数も多く「ケ」の器、精製土器は数も少なく、「ハレ」の器と考えられている。
注口土器に粗製土器はないからハレの器である。注口土器から注がれた液体の中味を科学的に証明することは難しいが、個人的には酒であって欲しい。亀ヶ岡式の注口土器は普通、径10cmから20cm前後、本品は径28cmほどもあり、大型である。多くの人が集まるマツリの席で酒がふるまわれたのだろうか、そんな想像を禁じ得ない。
(青森県立郷土館 主任学芸主査 中村哲也)
by aomori-kyodokan | 2015-05-21 12:56 | ふるさとの宝物
<< ふるさとの宝物 第96回 シラ... ふるさとの宝物 第94回 五つ... >>