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青森県立郷土館ニュース

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「北斎の富士」新聞連載 第9回「東海道吉田」

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 葛飾北斎の「冨嶽三十六景」は、富士山を描いた錦絵の傑作です。題名の三十六景に十景(通称・裏富士)を加えた、計四十六枚で構成されています。富士山を主題にしているので、色々な表情を見せる富士山や、富士山を見る人々の生き生きとした表情、そして当時の風俗や自然に目が奪われるのは当然のことでしょう。実際、来館したお客様も、一枚ずつじっくりご覧になっています。

 しかしこの「冨嶽三十六景」には、隠れた楽しみ方もあるのです。それは、「三十六景」の版元・永寿堂のマーク(傘に三つ巴)や、「永」・「寿(壽)」の字を探すというものです。例えば「23東海道吉田」では、富士山がよく見える茶屋に立ち寄った旅人の笠に、マークや「永」の字が描かれています。また、「37本所立川」では、材木に「新板三拾六景不二仕入」という文字が書かれているのです。このように版元は、絵の中にマークや文字を入れて宣伝し、版権が移ると消されました。

 一方「富嶽百景」では、一見しただけではなかなか富士山を見つけられない作品があります。「百景」ではぜひ富士山を探してみてください。本展は、所蔵者の厚意で3冊の冊子本をばらし、全102点を額装して展示しています。「百景」の全作品が一度に見られるまたとない機会と思います。

 「百景」は、色刷りではないものの、奔放な発想・構図と繊細な彫りで、「三十六景」以上に北斎の洒落っ気が味わえると思います。会場では作品保護のために照明が少し落とされていますが、全作品を一枚ずつ額装にしてあるため、じっくり作品をご覧いただけます。本物に接し、「三十六景」の版元の宣伝や、「百景」の富士山を探してみてはいかがでしょう。

 会場内で探せなかったという方には、今回の展示のために出版された図録「北斎の富士」をおすすめします。他に人気の高い絵はがきや画集など様々なグッズも、物品販売コーナーで取り扱っていますので、作品観賞後も楽しめると思います。
(青森県立郷土館解説員・坂本理恵)

※現在、青森県立郷土館では東奥日報社と共催で「北斎の富士」を下記のとおり開催しています。これに関連して、紙上に10回にわたって、見どころを紹介する記事を掲載する予定です。ご期待ください。

□期日 10月30日(土)~12月5日(日)
□時間 10月30日・31日は9時~18時(入館は17時30分まで)
      11月1日以降は9時~17時(入館は16時30分まで)
□会場 当館1階特別展示室(大ホール)
■料金 一般・大学 800円(600円) 中学・高校 400円(300円)
      小学生以下は無料 ※(  )は前売りおよび20名以上の団体料金
■問い合せ先 東奥日報社・読者事業局事業部
〒030-0180 青森市第二問屋町3-1-89 電話=017-739-1249 FAX=017-729-2352
by aomori-kyodokan | 2010-11-25 10:08 | 北斎
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