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青森県立郷土館ニュース

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11月13日 開催土曜セミナー「消えた東北本線」 配布資料

 平成22年11月13日、当館小ホールに於いて、標記のセミナーが客員学芸員 中園裕氏によって行われましたが、その配布資料を下記に公開しますので、ご活用ください。

 また、毎日新聞青森版でも紹介されました。更に、生中継までご紹介いただきました。
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青森県立郷土館土曜セミナー   2010年11月13日(土) 県立郷土館にて
消 え る 東 北 本 線~沿線の歴史と魅力をさぐる!~
                  青森県環境生活部県民生活文化課
                    県史編さんグループ 主幹 中園 裕

はじめに

 ①東北本線…1891(明治24)年に青森・上野間全通。近代日本の発展に寄与。
→2010(平成22)年12月4日、青森県内の東北本線が消滅する。
 ★東北本線が青い森鉄道に=幹線から地方線へ大転換。
 ②東北新幹線の到来より、青い森鉄道開業の歴史的意義を重視。
→青森県民は私企業の新幹線より県民が負担する青い森鉄道を考える必要あり。
★青森県内には地方線が多い。青い森鉄道の問題は他の鉄道にも関係あり。
 ③県民が利用しなければ公共交通(鉄道・バス・タクシー・飛行機)は廃業。
→自動車社会とはいえ、公共交通は絶対に必要(子供や老人のためにも)。
 ★県民が“意識的に”利用する必要あり。皆が利用すれば営業も成り立つ。
 ④公共交通の利用は地域援助である。人助けだと思って利用されたい。
→青い森鉄道沿線の歴史や文化を知り、地元に愛着を持てれば利用できる?
★子供たちにも大人が地元を歩かせ鉄道やバスに乗せる工夫を。
 本発表で、自動車では見えない地元の歴史や魅力を知って欲しい。

1.青森県の近現代を支えた東北本線
 ①当初はいやがられた鉄道…八戸駅の帰趨。
→明治24年開業当時は尻内駅。昭和46年に八戸駅と改称。
 東北本線を八戸町のどこに通すかで日本鉄道と陸軍省が対立。尻内駅誕生。
★東北本線や新幹線は街並み発展に寄与。今も八戸と本八戸の距離が問題。
 ②鉄道が駅と繁華街を形成…「県南の要衝」剣吉駅と「東北の熱海」浅虫駅。
→明治30年開業。駅開設以降、駅前通りが形成され商店街も成立。
★剣吉駅は県南要衝の地で道路舗装も早かった(昭和10年)。
→明治24年開業。当時の浅虫は静かな湯治場だったが鉄道開通で有名に。
★昭和61年に浅虫温泉駅と改称。東北本線沿線で数少ない海の景勝地。
 ③地域を支えた鉄道…浦野館村の中心たる沼崎駅と七戸の関係。
→明治24年開業。七戸との間を荷馬車が往復し七戸地域周辺の玄関口に。
★七戸十和田駅の開業で七戸~上北町(乙供)~小川原湖の流通体系に期待。
 ④貨物輸送が重視されていた国鉄…軍需物資を集積し輸送した野内駅。
→明治26年開業。石油備蓄タンク併設、上北鉱山の鉱石を集積輸送。
国鉄はもともと国や軍のために敷設された鉄道。物資輸送が重視。
★青い森鉄道時代には駅を移転し青森工業高校生を中心に民事利用に転換。
 ⑤鉄道と青森県のりんご輸送…南部りんご最大の輸送駅だった三戸駅。
→明治24年開業。三戸周辺の中心駅。昭和59年に貨物輸送を中止。
 国鉄経営合理化やトラック輸送で貨物業務は昭和30年代以降廃止が相次ぐ。
 ★貨物輸送が駅周辺の経済基盤を維持。農林水産業県の青森県は特に顕著。
  青い森鉄道時代の駅は三戸駅ですら売店を撤去。観光対策上も問題。
 ⑥観光と鉄道…白樺の駅=古間木駅(昭和36年に三沢駅と改称)。
→明治27年に開業。昭和9年に白樺の丸太を使った駅舎に改築。
 現在も「白樺の駅」の一部は三沢駅旅行センターとして活用。
★十和田湖の国立公園運動に因み古間木駅も観光路線を意識。
 ⑦東北本線の複線電化…消えた浦町駅と浪打駅。
→高度経済成長に伴う好景気を背景にレジャーブームが生まれる。
 昭和33年に東北地方初の特急「はつかり」が登場、35年にディーゼル特急へ。
 東北本線の輸送力増加に応えるため複線電化を実現。
 ★東北本線は高度経済成長期の青森県を支えた大輸送路に(=流通革命)。
→浦町駅は明治26年開業(旧線路通りが当時の鉄道跡)。
 大正15年に操車場ができ、浦町駅自体もやや南方へ移転。
 昭和43年の複線電化により浦町駅は廃止され平和公園に。
→浪打駅は大正13年開業。浦町・浪打両駅の代わりに東青森駅が開業。
★青森市内の東北本線複線電化は青森市街地の発展と大きな関係がある。
 鉄道は街の拡大発展に貢献し、同時に支障を来す存在でもあった。
 ⑧青森駅の歴史は県都青森の歴史…明治24年開業。
→初代…安方通りに出入口(安方駅)。後に駅前へ船入場を建設。
 2代…明治39年改築。新町通りに出入口。築港後は桟橋と可動橋を併設。
 3代…昭和10年開業。戦災を免れた木造駅舎。連絡船は空襲で壊滅。
 4代…現駅舎。昭和34年新築でコンクリート製。

2.青森県内から消える東北本線(青い森鉄道の開業)
 ①交通網の高速化と自家用車の普及…鉄道の役割に大きな変化が生じた背景。
→航空機や高速道路網の発展が鉄道に打撃。最近では高速道路無料化も。
 ★近距離輸送は自動車が担い、貨物輸送はトラック輸送が主役。
 貨物輸送の赤字と合理化政策で国鉄の貨物が廃止。国鉄の経営に支障。
 ②国鉄の民営化…国家発展ための鉄道から企業が採算を重視する鉄道へ。
→国鉄の合理化政策と民営化(JR)で地域と鉄道の関係が大きく変容。
 国益より企業利益を重視。採算がとれない路線は廃止。国民生活は二の次。
★鉄道が近代国家の発展を支え、地域経済に活力を与えた時代は終わった。
 ③東北新幹線の新青森開業…JRは採算のとれない東北本線を放棄?
→JR東日本は首都圏と東北・北海道を結ぶ高速交通機関の役割を担う。
★地域間輸送の役割は自動車が担い、鉄道は遠距離輸送に集約する時代。
 青森県の近代化を支えた東北本線を、今度は青森県が支えることに。
 青い森鉄道の開業は地域が鉄道を支える時代に入ったことを意味しよう。

3.青い森鉄道沿線の歴史と魅力
①八戸…旧尻内駅、臨海工業地帯は近代化遺産、五戸・種差方面への玄関口。
②北高岩…馬淵川と名久井岳と新幹線の高架橋が織りなす眺望の地。
③苫米地…名久井岳と馬淵川の眺望の地、旧福地村の記憶、バーデパーク。
④剣吉…剣吉館、古来から交通の要衝、達者村や法光寺への玄関口。
⑤諏訪ノ平…名久井岳の麓、菊の里、果物王国、諏訪神社。南部蕎麦。
⑥三戸…城下町風情、城山公園、佐瀧本店、川の駅、きんか餅、南部せんべい。
⑦目時…青岩橋の眺望、蓑ヶ坂、秘境の様相を見せる馬淵川、岩手県境。
⑧金田一温泉…座敷童、古い街並み、のどかな温泉、馬淵川の絶景。
⑨陸奥市川…進駐軍と深い関係、数少ない占領時代の遺構、東北の白像。
⑩下田…下田館、江戸時代の知行地、いちょう公園、奥入瀬川、桃川酒造。
⑪向山…氣比神社、絵馬市と蒼前信仰、牧場地帯、カワヨグリーン牧場。
⑫三沢…米軍基地、アメリカ文化、古牧温泉、海岸と草原、ミスビードル号。
⑬小川原…小川原湖、姉沼、ワカサギ漁。
⑭上北町…七戸十和田駅との流通、小川原湖、小川原湖温泉郷、ワカサギ料理。
⑮乙供…上北鉱山への出入口、乙供森林鉄道、東北温泉、東龍館(低温温泉)。
⑯千曳…南部縦貫鉄道跡地、何も施設がない駅の良さを満喫。
⑰野辺地…愛宕公園、駅弁(とりめし)、地豆腐と地納豆、馬門温泉。
⑱狩場沢…藩境塚、海岸よりで眺めのよい駅(海が少ない青い森鉄道)。
⑲清水川…海岸沿いの駅、海産物の集積地、ナマコとホタテ。
⑳小湊…浅所松島、夜越山、汐立川、白鳥飛来地、可動橋のあった港。
21西平内…夏泊半島、療養の地(国立療養所)、浅虫温泉との縁。
22浅虫温泉…海の温泉、浅虫八景。久慈良餅と地豆腐。
23野内…石油タンク、上北鉱山の索道、新野内駅への移転あり。
24矢田前…東北線複線電化と跡地の歴史、合浦公園。
25小柳…青森市街地発展の証拠、歴史的な団地群、浪打駅と浦町駅の存在。
26東青森…東北線複線電化、第5連隊や青森操車場の歴史。
27青森…闇市とりんご市場が原点、流通都市の象徴、青函連絡船。
28新青森…新幹線、秋田県北や「半島」の玄関口。

おわりに 青い森鉄道を守るのは県民 ~鉄道やバスに乗ることは人助けである~
 ①青い森鉄道は県民が支える県民のための鉄道。
→子供と老人には特に必要な交通手段。単に赤字だから廃止ではだめ。
 青森県の観光地化が叫ばれている中、鉄道の果たす役割は大きい。
★観光客に利用されるよう青い森鉄道会社の経営工夫は不可欠だが…。
 地域の交通網を残すため県民皆が乗って経営を支えることが第一。
 ②自動車社会で県民が鉄道やバスを使うための工夫は? 
→自動車は便利だが、地域の鉄道やバスは子供や高齢者に必要不可欠。
 ★自分もいずれ老人になることを考え、今から少しでも協力して欲しい。
 ③決められた時間枠で活動する生活も必要。
→本数の少ない鉄道やバスでは生活困難。自由が利く自動車が便利なのは事実。
 決められた時刻表の範囲内で動ける場合は鉄道やバスを使ってほしい。
 ★自由が案外無駄な時間を作っている。制限が規律正しい生活を可能に。
低価格と効率だけでは人間生活が貧相になる。有意義な時間の使い方を。
 ④生活手段では無理でも、休日や旅行での利用を心がけて欲しい。
→鉄道は車窓を楽しめる。旅行気分になることも可能。酒を飲んでも大丈夫。
 地球温暖化を防ぐために鉄道やバスを利用。地球の維持に貢献して欲しい。
 本日の発表で紹介した沿線の歴史や魅力を知るために鉄道を利用されたい。
 ★鉄道やバスに乗ることは、人助けであり、地域助けである!!!

【関連サイト】
「新幹線時代への道標」

by aomori-kyodokan | 2010-11-14 09:22 | 土曜セミナー
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