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青森県立郷土館ニュース

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 新しい記事につきましては、現在、当館指定管理者のブログ「Weeklyきょうどかん」が開設されておりますので、
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# by aomori-kyodokan | 2023-01-01 00:00 | お知らせ

青森郷土見聞録 第18回 盆の飾りと供えもの⑤ カラフルな下げ菓子  野菜や果物の代わり お盆とうろう

 盆の墓前や仏壇につるして飾るためのユニークな菓子がある。「とうろう」と呼ばれる極彩色の最中(もなか)だ。飾り方の一例は7月29日付の本連載で紹介した。筆者の実地調査では、北海道から青森(下北・津軽)、秋田、山形(庄内)で用いられていて、秋田では「とろんこ」、北海道では「つるし」などとも呼ばれる。

 「とうろう」の形は、なす、ぶどうなどの季節の産物から、釣鐘、仏像まで、製造元と流通域により差がありバラエティに富む。

かつて製造していた秋田の職人によれば、当初は野菜や果物の形が主流だったという。
山形では「下げもの」といって、季節の産物をかたどった打菓子(粉菓子)をつるす。
青森の職人によると、昔は煎った大豆が中に一粒入っており、振るとカラカラと鳴るので子どもに喜ばれたという。

 これらのことから「とうろう」は、野菜や果物などの供物代わりに用いられる菓子であること、最中はそのバリエーションの一つであること、もとより食べること以外の意味をあわせ持つ菓子であったことなどがわかる。
 墓前や仏壇を美しくにぎやかに飾り、盆に来る霊をもてなす気持ちが、極彩色の派手な色使いや形態の多様化を促したのだろう。

(青森県立郷土館学芸主査・増田公寧)
青森郷土見聞録 第18回 盆の飾りと供えもの⑤ カラフルな下げ菓子  野菜や果物の代わり お盆とうろう_b0111910_09145906.jpg
写真:盆の下げ菓子。左上から時計回りに北海道・青森・秋田・山形の一例(筆者収集)。

お盆とうろう、下げもの等についてもっと詳しく知りたい方は……
「青森県上北・下北地方の盆棚」(青森県立郷土館研究紀要第45号)をご覧ください。

当ブログ ふるさとの物語 第121回「お盆のとうろう(トウロウ)」もあわせてご覧ください。



# by aomori-kyodokan | 2021-08-19 12:00 | 青森郷土見聞録

青森郷土見聞録 第18回 盆の飾りと供えもの④ 仏様のお弁当  昭和40年代から折詰化 法界折

 盆になると県内の各家では仏様用のお弁当を作って墓前に供える。「法界弁当」「法界折」の名で、スーパーにもズラリと並ぶ。近年はペットの墓にも手作りの「法界弁当」を供える光景が見られる。中身はペットフードだ。

 あらためて「法界」とは何だろう。法界衆生、無縁法界などの仏教語に見えるが、「ほかい」という古い日本語があることにも注目したい。この言葉は霊魂に供物を献ずること、すなわち「たむける」という意味を持つ。青森では今も墓参のことを「ホガイする」「ホゲする」という。
転じて、食物を家の外へ持ち出す容器を「行器」(ほかい)と言う。まさに弁当である。

 本県での都市部で弁当形式が普及したのはおおむね昭和40年代。昔はカボチャやブドウなどの葉を皿代わりにして、料理や菓子を供えていた。

 なぜ供物が「弁当」(折詰)化したのか。第一に持ち運びの便がよい。種々の食物を詰め合わせ、そのまま供えることもできる。また、本県や近隣諸県のように調理済みの食物(熟饌(じゆくせん))を墓前で食べる地域では、弁当スタイルは都合がいい。近年は供物の持ち帰りという点でも、時代の要請にかなうものとなった。

(青森県立郷土館学芸主査・増田公寧)
青森郷土見聞録 第18回 盆の飾りと供えもの④ 仏様のお弁当  昭和40年代から折詰化 法界折_b0111910_09145495.jpg
写真:墓前に供える各地の弁当の一例。左上から時計回りに北海道(甘納豆の赤飯)・青森(赤飯)・秋田(赤飯と赤ずし)・岩手(団子と生米)


# by aomori-kyodokan | 2021-08-12 12:00 | 青森郷土見聞録