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青森県立郷土館ニュース

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タグ:美術 ( 26 ) タグの人気記事

ふるさとの宝物 第111回 鈴木正治の木彫「○△□」

創造膨らむ不思議な形

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「形そのものとしても、単純にものが表現できれば最高だと思う」と語った青森市出身の彫刻家鈴木正治(1919~2008年)の作品は、これまでにも何度か紹介しているが、写真は○△□と題する木彫。一本の細長い木の中に、○と△と□を彫り抜いたもの。一つ一つの小部屋のような空間の中に、○△□が閉じ込められた作品である。
○(球体)と□(立方体)は狭い空間の中で動く。しかし、△(三角錐)はどういうわけか上部と一部の側面が切り離されていないので動かない(動けない)。限られた空間の中で動くモノと動かないモノがある。なぜなのか。外側に出られないという限界がありながらも、動くことができる○と□。動けない△は、まるで空間の中で浮いている一瞬を表現しているようだ。
途中で頭の中に描いた設計図から離れ、彫ることをやめたのか、制作者にしかその意図は分からない。想像する楽しさを与えてくれる不思議な魅力をもつ作品である。
県立郷土館は、10月31日(土)まで、深浦町美術館で連携展「鈴木正治作品展」を開いており、この作品をはじめ、絵画や版画約50点を展示している。)
(県立郷土館主任学芸主査 太田原慶子)
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by aomori-kyodokan | 2015-09-10 11:48 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第98回 奈良岡正夫の油彩画「閑日」

命の優しさ、深い愛情


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奈良岡正夫「閑日」(油彩、キャンバス)


 弘前市出身の油彩画家奈良岡正夫(1903~2004年)は、ヤギを好んでテーマにしたことから「ヤギの画家」と称される。奈良岡は、戦時中、その写実力を見込まれ、従軍画家として戦地に赴き戦争記録画を残した。人間が争い、苦しむ姿を目の当たりにした体験により、戦後は物言わぬ動物達に心を惹(ひ)かれていったという。
昨年、山羊の親子を描いた作品、岩木山など故郷の風景を題材にした作品などが当館に寄贈された。写真の「閑日」の制作年は分からないが、題材としてはあまり多くない、人物を描いたものである。大人の手元を見つめる幼子、その後ろ姿に注がれる優しい眼差しと穏やかな空気を感じさせる。
1997年に発行された『奈良岡正夫画集』(生活の友社)に同じ構図の「孫」(90年)と題した作品があるが、「閑日」は、生涯絵筆を握り続けた画家の、命に対する優しさと愛情の深さ、力強さがより伝わってくる。
(主任学芸主査 太田原慶子)
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by aomori-kyodokan | 2015-06-11 12:00 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第91回 鈴木正治 エンボス「栗と虫」の原版

手作業で刻み込んだ線

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エンボス「栗と虫」の原版


 「本当の形が最高だと思う。人間が手をかけたほうがいやみだ。だからそのいやみな部分はなるべく少なくしたい。」「展覧会などに行くと『手を触れないで下さい』と札があるでしょう。あれがなにか拒否されたようですごくいやだ。だから自分では、いくら触っても構わない、踏んだり蹴ったりしてもいい形をつくりたいと思った。」これは鈴木正治の願いである。
 鈴木正治が亡くなってから今年で5年目。齋藤葵和子氏に寄贈していただいた2000点に及ぶ作品の中から200点ほどを選び、平成27年3月14日(土)から青森県立郷土館大ホールにて「彫刻家・鈴木正治の世界展」を開催している。
 今回、初めて展示されているのがエンボス(空刷り)の原板となる銅版である。エンボスは版面にインクを付けずプレスなどで凹凸を刷り出す方法。鈴木はほかの芸術家のように、銅版に硫酸などの薬品を使用せず、手作業で細かい線を刻み込んでいる。鈴木正治のマクロとミクロの世界を自分の目で見る楽しみがこの展示会にはある。ぜひ鈴木正治の世界に浸っていただきたい。
(県立郷土館 学芸主査 伊丸岡 政彦)
※ なお、この企画展はすでに終了しております。
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by aomori-kyodokan | 2015-04-09 08:58 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第88回 「横たわるトルソー」

豊かな才能感じさせる

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鈴木正治 「横たわるトルソー」




 彫刻家・鈴木正治の作品は、青森市内のあちこちで出会うことができる。浅虫水族館の入り口付近や、青い森公園の中、青森県総合社会教育センター内の庭、某うなぎやさん、某病院の前などなど。我々にとってなじみ深いこの作家の作品約二千点が、2014年1月、長年にわたり鈴木正治の制作活動を支援してきた斎藤葵和子氏によって、当館へ寄贈された。その中には、鈴木の代表作といわれる「誕生」と「ウゴカズ」の他にも、魅力的な彫刻作品が数多く含まれていて、石彫「横たわるトルソー」もそのひとつである。
 この作品は大理石を素材とした両手で抱えられるぐらいの大きさ(1970年制作、縦15㎝、横30㎝)である。大理石ならではの質感が、まるで人間の肌のようななめらかさをたたえている。女性の体の持つ柔らかな曲線がこれほど美しくしかも重量感たっぷりに表現されていることの驚き。おへそのわずかなくぼみのかわいらしさ。しばし、見入ってしまう魅力にあふれている。これまで、様々な鈴木作品を見てきたつもりでいたが、あらためて鈴木正治という彫刻家の才能の豊かさを再確認させてくれた一点である。
 この作品は、3月14日より開催している「斎藤葵和子コレクション寄贈記念企画展彫刻家・鈴木正治の世界」に展示中である。
(前県立郷土館副課長 對馬恵美子)

※ この企画展はすでに終了しました。
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by aomori-kyodokan | 2015-03-19 15:59 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第77回  加藤武夫の豆本「木版画小品集(モスリンブック)」

出来栄え 志功が賞賛

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>加藤武夫の豆本。手前のペンと比べれば小ささが分かる


 版画家加藤武夫は、1961(昭和36)年から1971(昭和46)年までにかけて、木版画で制作した県内各地の景勝地の風景を十数点集め、製本した豆本「モスリンブック」を7巻私刊した。加藤は「モスリンブック」ができる度、棟方志功に贈呈し、それに対して棟方も必ず加藤へ礼状(はがき)を出した。61年6月25日付の志功の葉書には「内容の板画みな、まとまって小気味よい出来栄えです。」とあり、また棟方は「モスリンブック」の装丁がとても気に入ったようで、「とても色の美しい表紙です。この色は、私も大好きです。」とも書いている。
 さて、「モスリンブック」の「モスリン」とは、明治維新の頃に輸入された羊毛で織られれた薄手の平織りの生地のことをいう。その後、日本製のモスリンが生産されるようになり、安価なことと発色の良さから広く普及した。
 当館では、来年の干支「羊」にちなんだ「新春展」を開催中であるが、羊の毛が使われているということで、この「モスリンブック」も展示している。豆本のかわいらしさ、そこに貼られた小さな版画作品、モスリン特有の色彩の表紙、それぞれを楽しんでいただけたらと思う。
(前県立郷土館副課長 對馬恵美子)
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by aomori-kyodokan | 2014-12-18 15:28 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第65回 松木満史の油彩画「馬のいる自画像」

酒を愛した画家の1枚
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松木満史「馬のいる自画像」
祝酒の封を開ける松木満史
(県立郷土館発行「松木満史とその時代展」図録より転載)


 現在、当館では特別展「発酵食品パワー」を開催中であるが、発酵食品を代表するのもののひとつは酒であろう。古今東西、酒を愛した芸術家は多く、棟方志功のように、全くお酒を飲まない画人はむしろ珍しい。志功の青春時代の画友、松木満史は例外にもれず、酒が大好きであった。
 満史は第1回(1959年)の青森県文化賞の受賞者であったが、その第一報は、蔦温泉に滞在中の、満史と小館善四郎他計4名の国画会仲間で酒宴を催している真っ最中に届いたという。4人は秋の十和田の写生旅行に来ていたのである。
写真は、宿の主人から祝酒の差し入れが入り、それを喜色満面の笑みを浮かべた満史が封を開ける瞬間である。この夜、4人で1升瓶にして3本を開けたというから、酒豪ぞろいであったのだろう。皆、祝いの美酒に酔いしれたにちがいない。
 掲載の作品は、受賞の翌年(60年)頃に描かれた油彩画「馬のいる自画像」、向かって右側の人物が満史である。
(前県立郷土館学芸課副課長 對馬恵美子)

※ なお、特別展『発酵食品パワー』は、昨年秋好評のうちに終了しました。
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by aomori-kyodokan | 2014-09-25 11:45 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第53回  今純三の油彩画「信子像」

幼子を描いた幻の秀作

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今純三「信子像」(44.5センチ×33.3センチ、1926年)


 オカッパ頭の女の子の無垢な視線に思わず引き込まれる。そのふっくらとした頬に思わず触れて見たくなる。人の長い一生の中で幼子(おさなご)だけが持つひとときの輝きに、なにか胸をつかれる。そんな思いをさせるこの作品を描いたのは弘前出身の画家、今純三(1893~1944)である。
 純三による油彩画「信子像」が当館に寄贈されたのは2007年のことで、それまで今純三の画集や展覧会目録等にも掲載されたことがなかったために、存在が知られることがなかった。まさに幻の一点と言えるものである。
 純三の画歴をみると、前半の東京時代は油彩画家としての制作が中心であり、大正12年青森に移住してからは銅版画の制作が中心となる。これにともない、純三の作風も印象派風の情感あふれる描き方から、どこまでも正確さと緻密さを追求する写実の方向へと変化していった。この作品はちょうどこの中間地点に位置し、写実でありながら幼子(おさなご)の愛くるしさが見事に表現され、純三の代表作の油彩画「バラライカ」にならぶ秀作といって良いであろう。
(前県立郷土館学芸課副課長 對馬恵美子)
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by aomori-kyodokan | 2014-07-03 15:27 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

「奈良岡正夫氏寄贈作品」展示について

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 この度、油彩画家 奈良岡正夫(弘前市生まれ、明治36~平成16年)の作品6点が当館に寄贈されました。
奈良岡は高等小学校卒業後から画家を志し、大正14年に上京しました。昭和21年、第1回日展に初入選しその後入選を重ね、特選、無鑑査を経て、38年に会員になり、審査員、評議員などの要職につき、54年には日展参与となりました。40年に青森県褒賞受賞、61年には紺綬褒章受章しています。
奈良岡は動物画を多く描き、中でも山羊を特に好んでテーマとしたことから、「山羊の画家」として知られています。

期  間  平成26年6月17日(火)から
場  所  青森県立郷土館 3階 先人展示室
観 覧 料  常設展観覧料金
展示資料  奈良岡正夫氏作品 5点
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by aomori-kyodokan | 2014-06-20 11:43 | 小展示 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第42回 虹の上を飛ぶ船完結編

子供が描く壮大な物語

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「虹の上を飛ぶ船完結編」(2m×4m)


 1970年に坂本小九郎先生が八戸市立湊中学校に赴任し養護学級を担当、美術を指導した。その成果として「船の一生」「虹の上を飛ぶ船」の版画集を制作、引き続き共同制作「虹の上を飛ぶ船総集編Ⅰ」「虹の上を飛ぶ船総集編Ⅱ」、「虹の上を飛ぶ船完結編」が完成した。これらの版画は生徒の家庭の多くが漁業関係者であったことから、魚と港の人々との関わりに端を発し、やがては宇宙を含む壮大な世界へと発展する一連の物語となっている。
 完結編は縦2メートル縦4メートルもの大きな版画作品で、『船の一生』から『虹の上をとぶ船総集編Ⅱ』までの一連の版画集や共同制作作品の各イメージが結集された内容になっていて、太陽と月、火山、ペガサス、サソリ、船など子供たちの心の奥底から湧き出した様々なイメージが共存し、壮大な神話を思わせるようなファンタジーの世界が創り出され、本県の版画教育の中から生まれた名作のひとつと言えるであろう。
(前県立郷土館学芸課副課長 對馬恵美子)
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by aomori-kyodokan | 2014-04-17 10:12 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第33回 根市亮三の「思い出」表紙画

太宰お気に入りの1枚

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太宰治「思ひ出」の表紙を飾った根市良三の作品


 本県は版画の盛んな県として知られているが、その礎を築いたのは昭和初期に青森中学(現青森高校)の生徒達が自分達の版画作品を貼り込んだ冊子「緑樹夢」に端を発する一連の版画誌の発行である。これらの版画誌は、彼らの先輩格の今純三、棟方志功らも加わり、他県の版画家たちとの交流へと広がりをみせるなど、本県の版画の普及に大いに貢献することとなった。
 根市良三は『緑樹夢』を発行したメンバーのひとりである。根市は中学時代からシュルレアリスム風の作品を制作するなど早熟の天才肌の少年であったが、33歳の若さで早世している。当館には彼の短い生涯に制作された版画のほとんどが、甥にあたる方から寄贈され収蔵されている。
 掲載の版画は、根市と交流のあった太宰治から依頼されて、版画で制作した本の表紙画である。太宰は、自身の実質のデビュー作『思い出』が掲載された雑誌から、その部分だけを切り取り、綴りなおしたお手製の本を34冊作った。その一つは小説家壇一雄の手にも渡っている。太宰はこの表紙画をとても気に入り、後に著した短編集の表紙のデザインにもバラの絵柄を利用している。
(前県立郷土館学芸課副参事 對馬恵美子)
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by aomori-kyodokan | 2014-02-13 10:26 | ふるさとの宝物 | Comments(0)