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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第105回 イタヤ細工の箕(み)

かつて南郷で多く生産

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イタヤカエデを編んで作られた箕


 写真は、脱穀した穀物の実と籾(もみ)を選別する用具の箕(み)である。イタヤカエデとフジ皮で編まれており、横116センチ、縦77センチ。1972年に五戸町の浅田中学校から寄贈されたもので、製作地は南郷村(現八戸市南郷区)世増(よまさり)と記録されている。世増はイタヤ細工の地として知られ、箕のほかにリンゴ籠、お針籠などを作り、県南地方一円を販路とした。
 8年前の7月に世増出身のおじいさんからイタヤ細工の話を聞く機会があり、その手業も見学した。編む材をツラモノといって、イタヤを縦に鉈で割り、さらに小刀で剥いで、長さ1.2メートル、幅1.2センチ、厚さ1ミリほどにする。ツラモノを作る技術と道具ひとそろいがあるのは、今はおじいさん一人だという。ダム建設による世増各戸の移転から、イタヤ細工も続かなくなった。材は男でないと作れないが、男はすぐ飽きるから編み上げるためには、女手がどうしても必要だという話が印象深かった。
 後日知ったのだが、五戸町出身の民俗学者能田多代子の世増採訪記「箕作りの村を訪う」(1949年発表)に、このおじいさんは若者として登場していた。                                  
(県立郷土館学芸課長 古川実)
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by aomori-kyodokan | 2015-07-29 15:22 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第104回 ニホンザリガニ

本県産を基に命名?
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岩木山麓で採集されたニホンザリガニ(体長約5センチ)


 本県には2種類のザリガニが生息している。小型種で日本在来種のニホンザリガニと、大型種で外来種のアメリカザリガニである。
 ニホンザリガニは北海道・本県および秋田北部と岩手北部に生息している。清流や湧き水を好み、渓流の落ち葉などを主な食べ物としている。親になるまで5~6年もかかり、産卵数も少なく、環境変化の適応能力も乏しい。個体数の減少が危惧されており、県レッドデータブックでは重要希少野生生物に指定されている。
 ニホンザリガニは古くから知られ、脱皮時期に胃壁にできる胃石が漢方薬として重宝されていた記録が、すでに江戸時代に残されている。その中に本県に分布する記述も見られる。
 学名は1841年にオランダの来電にある博物館の学芸員によって付けられた。その標本は江戸時代に来日したオランダのシーボルトが入手して本国に持ち帰ったもので、今も同博物館に補完されている。
 この標本は今も同博物館に保管されているが、産地などの明細な記述はない。しかし、その後の研究で、本県西部の個体に特有に見られる尾部の切れ込みや胃石の発達状況から、本県西部(津軽産)で6月ごろ採集された個体であると推測されることが分かった。
江戸時代後期に本県産ニホンザリガニの標本がオランダにまで渡っていたのである。
(県立郷土館学芸員 山内智)
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by aomori-kyodokan | 2015-07-23 16:58 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第103回 マタギの巻物

自由な狩りの特権証明


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1982(昭和57)年に五所川原市岩木町在住者から寄贈されたマタギの巻物


 古い書物のなかには、各家で代々継いできた生業について、その由来や特権を説明するために使われたものがあった。
 例えば伝統的狩猟を職としたマタギたちもそのような巻物「山立根本巻」を伝えていた。そのなかには昔、下野国の万治万三郎という弓の名手が、上野国赤城明神と戦った日光明神に助勢した褒美として、日本国中の山々で狩りをすることを認められてマタギの先祖になった、という伝説が記されている。
 現実のマタギ達もこれを持てば、どこの山野でも自由に狩りができる特権が証明されたという。また、なかにはマタギ特有の呪文が書かれているものもある。
 巻物の中身は絶対に他人に見せてはいけないといい、山の神の祭日にも開かなかったという。よってたいていは巻物を木箱や革袋に入れて神棚の奥に大事に祀ってきた家が多いが、世代を経ると子孫達にとっては中に記されている呪文について、ほとんど忘れられてしまっていた事例もあった。

(県立郷土館主任学芸主査 小山隆秀)
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by aomori-kyodokan | 2015-07-16 10:46 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第102回 鉤燭(かぎしょく)

安全への工夫こらす


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 県立郷土館が学校を対象に行っている「出前授業」で人気がある授業が小学3年生の「古い道具と昔のくらし」である。衣・食・住に関係する多くの古い道具から先人の工夫がわかる子供達に人気のある道具を紹介する。その中でも子供の興味を引く照明の道具が「鉤燭かぎしょく」である。
 写真のように、鉤燭は窓の縁や柱のはりにかけるタイプ(写真左)と柱に打ち込むタイプ(写真右)がある。ちなみに鉤燭の「鉤」とは、金属製の先が曲がった棒状の部分のことである。「燭」はあかりのことで蝋燭ろうそくなどをさす。
かけて使う鉤燭は、縁や柱のはりのサイズにぴったり合うと安定するが、サイズが合わないときはブラブラし、地震などが発生したとき外れて家の床に落ち火事になる可能性が高い。だから、写真のように「火要慎(火の用心)」と書かれてある。一方、打ち込んで使う鉤燭は、柱に直接打ち付けることで、ブラブラすることもなく安全に照明器具として使用することができる。
 子供たちに、「どちらが安全につかえますか」と質問すると、柱に打ち付けるほうの鉤燭と答える。同じ道具でも安全に使用するために工夫し使うことが先人の知恵から子供達に伝わった瞬間である。
(県立郷土館学芸主査 伊丸岡政彦)
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by aomori-kyodokan | 2015-07-09 10:10 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第101回 ニコニコの綿入れ

愛らしく暖かい幼児用

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幼児用に手縫いされたニコニコの綿入れ


「懐かしいねぇ」。70代後半以上の方々に尋ねると、そんな声が漏れる。「ニコニコ」は昭和30年代頃まで使われた木綿地の一種。安価で丈夫なことから、普段着や仕事着、子どもの着物の布地として、本県でも広く用いられた。写真の資料は、ニコニコで作られた一ツ身の綿入れ。1~2歳頃の幼児に着せたものだろう。包みこむように抱くため、丈は長めに仕立ててある。歩き始めれば着丈にあわせ腰アゲをとる。衽(おくみ)や肩アゲも、成長にあわせるための配慮であり、着物をかわいく見せるポイントでもある。男の子用だろうか。ニコニコによくみられる絣(かすり)風の柄に、あさぎ色の腰ひもがまぶしい。一人歩きする前は、このひもを身八つ口から出して前で結ぶ。寝ていることが多い時分、結び目が背中にあたって煩わしくないようにとの思いやりからだ。既成のベビー服もかわいいが、子の成長を願いながら手縫いされたこの綿入れは、なお愛らしく温かそうに見える。
(県立郷土館研究員 増田公寧)
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by aomori-kyodokan | 2015-07-02 15:57 | ふるさとの宝物 | Comments(0)