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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第93回 家印

家の呼び名や格を表す
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家の呼び名や格を表す


 民具を観察していると、刻印や焼き印を見つけるときがある。写真は展示資料から見つけた印で、左はヤマモト、右上はカクナカ、右下はリュウゴ(立鼓)と呼んだものと思う。建物や船、墓、道具類などに、それを所有する家を示すため付けられたもので、民俗学では家印と呼んでいる。印の呼び名が世間での家の呼び名になり、カネサ、ヤマサなど大店の屋号や商標にも用いられた。
 同族の家は同じ印を使うことが多く、家の新旧、本分家などの区別をヤマイチ、ヤマニというように数字などを付けて示したので、家印からその家の社会的な位置付けを推測できる場合もある。農具をほったらかしていると、家印からどこの家の農具かすぐ判り、その家の評価にも関わってくると教わったことがある。印を付けることは、日々の生活態度に責任を持つことでもあるということであろう。
 民具に刻まれた印は、ムラではどんな意味を持っていたのか、どんな人が使っていたのかなど、いろいろな事を考えさせてくれる。
(県立郷土館学芸課長 古川実)
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by aomori-kyodokan | 2015-04-30 09:13 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第92回 ニトベギングチ

新渡戸氏が採集、名前に


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「ニトベギングチ」(白神山地)


蜂と言うとスズメバチ、刺されると連想する方が多い。しかし、蜂は国内で約4500種もの種類が生息しており、その形態や習性は多種多様である。
 幼虫の餌を捕まえてくる狩り蜂の仲間に、青森県に縁のある先人の名前が付いた「ニトベギングチ」と言う蜂が生息している。名前のように、新渡戸稲造先生の従兄弟にあたる新渡戸稲雄氏(1883(明治16)年~1915(大正4)年)が青森県内で採集した蜂で名前がついた。
 新渡戸稲雄氏は,1900(明治33)年に設立された青森県農事試験場の初代害虫掛に就任し、特にリンゴの害虫駆除に従事している。当時、東北帝国大学農科大学(現北海道大学)の昆虫学者松村松年先生に多くの昆虫の同定を依頼している。その中の新種の狩り蜂に「ニトベ」の名前が献名された。ニチベギングチは体長15ミリメートル前後で、その詳しい生態は白神山地のブナ林で確認された。ブナの枯れ木に向かって、大型の蛾を狩って抱えて飛んでくる。そしてブナに開けた穴から奥に引き込み、その蛾に産卵し幼虫の餌にする。営巣には適度に腐朽した立枯樹と幼虫の餌となる大型蛾類の生息の環境条件が必要である。このニトベギングチは全国的に希少な種類で絶滅が危惧される。
(学芸員 山内智)
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by aomori-kyodokan | 2015-04-16 09:08 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第91回 鈴木正治 エンボス「栗と虫」の原版

手作業で刻み込んだ線

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エンボス「栗と虫」の原版


 「本当の形が最高だと思う。人間が手をかけたほうがいやみだ。だからそのいやみな部分はなるべく少なくしたい。」「展覧会などに行くと『手を触れないで下さい』と札があるでしょう。あれがなにか拒否されたようですごくいやだ。だから自分では、いくら触っても構わない、踏んだり蹴ったりしてもいい形をつくりたいと思った。」これは鈴木正治の願いである。
 鈴木正治が亡くなってから今年で5年目。齋藤葵和子氏に寄贈していただいた2000点に及ぶ作品の中から200点ほどを選び、平成27年3月14日(土)から青森県立郷土館大ホールにて「彫刻家・鈴木正治の世界展」を開催している。
 今回、初めて展示されているのがエンボス(空刷り)の原板となる銅版である。エンボスは版面にインクを付けずプレスなどで凹凸を刷り出す方法。鈴木はほかの芸術家のように、銅版に硫酸などの薬品を使用せず、手作業で細かい線を刻み込んでいる。鈴木正治のマクロとミクロの世界を自分の目で見る楽しみがこの展示会にはある。ぜひ鈴木正治の世界に浸っていただきたい。
(県立郷土館 学芸主査 伊丸岡 政彦)
※ なお、この企画展はすでに終了しております。
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by aomori-kyodokan | 2015-04-09 08:58 | ふるさとの宝物 | Comments(0)

ふるさとの宝物 第90回 イソカニムシ

海岸の石の裏にひっそり

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「イソカニムシ」(今別町高野崎)




 地面の中には、陸上以上に多く生き物が生活している。モグラ,ミミズ,蜘蛛や昆虫等その種類も形態も多種多様である。
 微少動物であるカニムシは、体長が数ミリでクモ類の仲間である。カニやサソリのような1対のハサミ(触肢)と4対の足(歩脚)を持っている。落葉中、土壌中、樹皮下等の様々な環境にすみ、ハサミでシミ、ダニ等の微少動物等を捕まえて食べる。危険を感ずるとなぜかこのハサミを体に密着させて後退で逃げるが、この印象的な姿から「アトビサリ」とも呼ばれている。国内から70種ほど知られている。
 海岸の石や流木をひっくり返すと、その裏に張り付くように潜んでいる「イソカニムシ」を見ることができる。海岸性のカニムシで体長4~5ミリとカニムシの中では大型種である。砂浜と海辺植物の境界線辺りから見つけることができる。本県では外ヶ浜町龍飛崎、深浦町椿山・森山、今別町高野崎、平内町大島、横浜町家ノ前川目、東通村尻屋等ほど全域の海岸で確認されている。
 普通に見られるイソカニムシだが、その形態は特異である。ぜひ、海岸に行ったら石の下を覗いて欲しい。興味深い世界が見られるかもしれない。
(県立郷土館学芸員 山内智)
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by aomori-kyodokan | 2015-04-02 16:13 | ふるさとの宝物 | Comments(0)