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青森県立郷土館ニュース

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希少な生物暮らす白神

津軽の遺産 北のミュージアム 第13回

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白神山地のブナ林


世界遺産「白神山地」
 白神山地は、平成5年(1993)12月の第17回世界遺産委員会において、世界遺産(自然遺産)として登録された。広大なブナ天然林地域として、高く評価されたのである。白神山地では、多くの生き物たちが生態系の調和を取りながら暮らしている。

白神山地の脊椎(せきつい)動物 
 白神山地には、ニホンツキノワグマをはじめ36種類のほ乳類が確認されている。その中には国の天然記念物に指定されているヤマネ、特別天然記念物のニホンカモシカも棲息している。ほかには渓流沿いに棲み、小魚や水生昆虫などを水中に潜り込んで捕食するニホンカワネズミ、樹間を滑空するムササビなども確認されている。また、白神山地の樹洞や洞くつから、カグヤコウモリ、モリアブラコウモリなど12種類のコウモリが確認されている。
 鳥類はクマゲラをはじめ85種類、は虫類はタカチホヘビほか9種類、両生類はトウホクサンショウウオなど13種類が確認されている。

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エゾゲンゴロウモドキ


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シラカミメナシチビゴミムシ


白神山地の無脊椎動物
 白神山地は、自然環境がとても良い状態で残された地域で、そこに棲息する昆虫は多種多様である。白神山地だけで認められる固有種、北限・南限の種類、希少な種類など、数多くの注目される昆虫が棲息している。豊かなブナ林は豊かな土壌をつくり、無脊椎(むせきつい)動物たちにも、豊かな生活場所を提供している。
 平成4年(1992)7月、白神岳において、青森県立郷土館の調査による貴重な発見があった。体長が約3.5ミリメートルしかない非常に小さいゴミムシの仲間が、土壌から採集された。今まで知られていなかった種類で、発見の翌年「シラカミメナシチビゴミムシ」として新種記載された。白神山地にしか棲息していない固有種である。この種類は名前からわかるように眼は退化して痕跡的に認められる程度で、さらに翅(はね)も退化してなく、体長も微小である。湿った土中の生活を好み、土中での生活に適応した体形をしている。体の構造からも移動範囲が非常に狭く広域での移動は不可能であり、棲息範囲も大変狭い。このため、伐採などでまわりの環境が急激に変化し、土壌が乾燥してきても逃げることができない。環境の悪化により短期間での絶滅を起こす可能性の高い種類である。この種類が白神山地で発見されたのは、白神山地が今まで伐採されることもなく、手つかずで、古くから自然の状態が良好でそのまま残されてきた場所だからこそで、その証になる昆虫である。
このほか、白神山地の豊かな腐葉土(ふようど)には数え切れないほどの無脊椎動物が棲息している。ブナ林の落葉や倒木を土壌に変える役割を担っている動物である。ミミズ類のほかに、体長が一センチメートルもない昆虫のトビムシ類がいる。翅が退化してなく、無翅(むし)昆虫類とも呼ばれている。赤石川の腐葉土からはクロトビムシモドキなどが、櫛石山(くしいしやま)の腐葉土や追良瀬川のブナ倒木上のコケからはニッポントゲトビムシなど多くの種類が確認されている。また、ブナ倒木からは体長四センチメートルもあるオオゴキブリが採集されている。自然環境が良好な森林にだけ棲む森林性のゴキブリである。これらの生き物がブナ林を支えている。
 白神山地には「ノロ沼」「十二湖」などの沼があり、川の流れからとり残された水溜(たま)りもたくさんある。これらはブナ林から湧き出てきた清らかな水をたたえ、トンボの幼虫やゲンゴロウなどの水中で生活する昆虫がたくさん棲息している。赤石川上流の神秘的で美しい「ノロ沼」からは、オオルリボシヤンマ幼虫、メススジゲンゴロウ、マメゲンゴロウ、ミヤマミズスマシなどが確認され、白神岳山頂の水溜りからはルリボシヤンマやタカネトンボの幼虫が確認されている。白神山地ではブナ林だけでなく、沼にも豊かな生物相が見られる。
(青森県立郷土館 学芸主幹 山内智)

※ この記事は、陸奥新報社の承認を得て、2007年6月18日付け陸奥新報の記事を転載したものである。
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by aomori-kyodokan | 2007-12-20 13:33 | 北のミュージアム
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