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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第12回 大町桂月書画「雪行図」

心情を表す絵と筆遣い

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大町桂月「雪行図」


 大町桂月は高知市出身だが、明治末期に十和田湖を訪れ、その魅力を全国に紹介し、蔦温泉で一生を終えた文人。
 「鶯や 脚下(きゃっか)積雪(かたゆき)百千仭(せんじん)」
 青森県でウグイスの声が聞こえはじめるのは、4月下旬である。堅雪(かたゆき)とは、春に解けかかった雪が夜間に冷えて堅く凍り付いた状態のことで、この書では、「積雪」と書かれている。
桂月が八甲田に惹かれた理由の一つにはこの堅雪があった。堅雪を取り上げた作品には、「堅雪の乗鞍嶽」をはじめ、高田大嶽、八甲田大嶽、駒ヶ峯などがある。「堅雪の乗鞍嶽」では「春より初夏にかけての堅雪の山嶽を踏破することは、世にも爽快を極む」と記している(『桂月全集別巻』昭和4年)。
 杖を持ち、「かんじき」を履いて軽快に堅雪を踏みしめている自画像と、書のリズミカルな筆の運びが、桂月の心情を絶妙に表現している。腰の瓢箪(ひょうたん)の中身は、好物の酒であろうか。
(県立郷土館学芸課副課長 竹村俊哉)
by aomori-kyodokan | 2013-08-22 10:19 | ふるさとの宝物
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