人形を乗せ海に流す
「鹿島祭り」の舟。人形を乗せ海に流される
日本海に面する深浦町大間越、黒崎、松神では、田植えが終わった6月から7月の期間に、地区ごとに「鹿島祭り」を行っている。この民俗行事は、鹿島信仰に基づく由来を持ち、人形を舟に乗せて流すことなどから、隣接する秋田県の鹿島流しと一連の民俗とされるが、舟の地区巡回に囃(はや)しと太刀振り踊りが付くことなどは、津軽地方で行われるムシ送りに類似する。舟は、再び地区の海岸に戻らないようにと、沖合まで運ばれて流される。
郷土館3階の民俗展示室には、この祭りで用いられる舟が展示されている。長さ約2.1メートル、帆柱までの高さ約1.2メートルで、実物どおりの造作である。舟に乗る25センチほどの人形7体は、それぞれ船主、船頭、舵取り、水夫、炊事係に役付けされ、鉢巻きをきりっと締めている。
この舟は、1984(昭和59)年製作の大間越の舟である。船尾の飾りには、ちょうど見ごろとなるアヤメの花、碇にイモサクという土地で採取できる野草を用いており、自然と民俗との連関を知ることができる。また、舟底は木を刳りぬいたもので、丸木舟製作の技法が反映されたものと推測される。
(県立郷土館学芸課長 古川実)