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ふるさとの宝物 第33回 根市亮三の「思い出」表紙画

太宰お気に入りの1枚

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太宰治「思ひ出」の表紙を飾った根市良三の作品


 本県は版画の盛んな県として知られているが、その礎を築いたのは昭和初期に青森中学(現青森高校)の生徒達が自分達の版画作品を貼り込んだ冊子「緑樹夢」に端を発する一連の版画誌の発行である。これらの版画誌は、彼らの先輩格の今純三、棟方志功らも加わり、他県の版画家たちとの交流へと広がりをみせるなど、本県の版画の普及に大いに貢献することとなった。
 根市良三は『緑樹夢』を発行したメンバーのひとりである。根市は中学時代からシュルレアリスム風の作品を制作するなど早熟の天才肌の少年であったが、33歳の若さで早世している。当館には彼の短い生涯に制作された版画のほとんどが、甥にあたる方から寄贈され収蔵されている。
 掲載の版画は、根市と交流のあった太宰治から依頼されて、版画で制作した本の表紙画である。太宰は、自身の実質のデビュー作『思い出』が掲載された雑誌から、その部分だけを切り取り、綴りなおしたお手製の本を34冊作った。その一つは小説家壇一雄の手にも渡っている。太宰はこの表紙画をとても気に入り、後に著した短編集の表紙のデザインにもバラの絵柄を利用している。
(前県立郷土館学芸課副参事 對馬恵美子)
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by aomori-kyodokan | 2014-02-13 10:26 | ふるさとの宝物 | Comments(0)
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