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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第114回 イモガンナ

余さず使うための知恵

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民俗展示室に展示中のイモガンナ


 下北地方には、ジャガイモの多様な加工法や調理法が伝えられている。イモが盛んに利用された背景には、水稲の栽培に不向きな気候的・地理的条件があった。
 利用の多様性を支える道具の一つに、「イモガンナ」がある。人々は「クズイモ」と呼ばれる小さなイモも、粗末にはしなかった。箱状の部分にクズイモを詰め、前後にスライドする。下部に組み込まれた刃でイモがスライスされる。
 水に浸けると「ハナ」(でんぷん)が沈殿する。ハナは食用にする。ハナの抜けた「イモカス」も捨てない。干して粉にし、モチやダンゴにして食べた。
 「へたて、なも食(く)のネェものよォ。さらして乾がして、ウスでハダいで、シノでトシて(フルイに通して)。バゲになれば、オツユの実。汁ダンゴってな。ツルつだナベコさ掛げどぐべ。それさフトツずづへで」(むつ市川内、87歳女性)。イモのカスと侮ってはいけない。これが意外においしい。
 ハナをとるには、すり潰(つぶ)して水に浸す方法もある。昭和40年代頃から、家庭用のジューサーミキサーを使ってすり潰すようになったと語る人もいる。道具は変わりつつ、イモの多彩な利用法は受け継がれてきた。
 ただ時を経るに従い、イモカスを捨ててしまう場合が多くなった。確かに「カス」まで食べる必要はない時代かもしれない。だが、余すことなく利用する知恵や技術や精神も失われてしまうのは惜しい。
(県立郷土館研究員 増田公寧)
by aomori-kyodokan | 2015-10-01 16:04 | ふるさとの宝物
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