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ふるさとの宝物 第60回 黒曜石製石刃鏃

大陸の息吹感じさせる

ふるさとの宝物 第60回 黒曜石製石刃鏃_b0111910_1392562.jpg

黒曜石の石刃鏃。表(写真左)に記された「尻ヤ」の文字が裏(同右)からも透けて見える

 石刃鏃とは、鏃[やじり]の一種、薄手の縦長剥片(石刃)を素材としその縁に加工を施される特異な形状からこのように呼ばれている。シベリアのアムール川流域を起源とし、ユーラシア大陸北東部に分布する大陸系の石器である。この石器の出現は約8000~7000年前頃と限られている。日本でも北海道北部から東部でこの時期(縄文時代早期)にのみ現れる。写真の資料は尻屋崎近く東通村ムシリ遺跡での採集品で、長さ39㎜幅11㎜厚さ25mm重さ1.2gと薄く小さい。光沢のある漆黒色の黒曜石で、明かりの下で見ると部分的に透き通る。黒曜石の産地を分析した結果は北海道東部にある置戸地区所山系であった。同様の産地の石刃鏃は渡島半島の長万部町富野3遺跡にても出土している。大陸の息吹を感じるこの資料が、どのようにして北海道からここまで辿り着いたか興味深いところである。ぜひ展示室で実見して考えを巡らせていただきたい。
(県立郷土館主任学芸主査 杉野森 淳子)
by aomori-kyodokan | 2014-08-21 13:08 | ふるさとの宝物
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