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ふるさとの宝物 第106回 津軽図譜「龍濱崎眺望図」

200年前の竜飛の景観

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 「津軽図譜」は弘前藩のお抱え絵師である百川学庵(ももかわ がくあん1799~1849年)によるもので、江戸後期の津軽地方の景観を描いた傑作である。
 百川は幼くして江戸に出て、画壇の巨匠谷文晁(ぶんちょう)に出会い南画の作風を身につけた。「津軽図譜」は25枚の連作で、藩船や鳥・魚類なども描かれている。江戸詰の弘前藩士で画人の比良野貞彦が1788(天明8)年に8代藩主津軽信明とともに下国した際に描いた「外浜(そとがはま)画巻」が原作であると言われている。
 「竜飛」は、天文年間(1532~55年)の成立とされる「津軽郡中名字(なあざ)」の中の「龍濱(たつひん)」にあたると推測できる。
 絵の右側には津軽海峡を隔てた北海道の松前半島が描かれており、水平線上には小島(左側の大きい島)と大島(右側の小さい島)もある。地図で確かめるとわかるとおり、小島は竜飛崎から見て手前にあるので、大島よりも大きく、彩色も濃く描かれているのである。また、右上の絵の説明に「往来万国船」と書かれてあり、よく見ると竜飛崎の岩礁の近くに白い帆が三つ小さく描かれていることに気付く。
 来年の3月にはいよいよ北海道新幹線が開業する。200年ほど前にこの絵が描かれたころ、海底の下を人が通るなどと誰が想像したであろう。
(県立郷土館学芸課副課長 竹村俊哉)
by aomori-kyodokan | 2015-08-06 09:43 | ふるさとの宝物
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