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青森県立郷土館ニュース

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ふるさとの宝物 第103回 マタギの巻物

自由な狩りの特権証明


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1982(昭和57)年に五所川原市岩木町在住者から寄贈されたマタギの巻物


 古い書物の中には、各家で代々継いできた生業(なりわい)について、その由来や特権を説明するために使われたものがあった。
 例えば伝統的狩猟を職としたマタギたちもそのような巻物「山立根本巻」(やまだちこんぽんのまき)を伝えていた。
 その中には昔、下野国の万治万三郎という弓の名手が、上野国赤城明神と戦った日光明神に助勢した褒美として、日本国中の山々で狩りをすることを認められてマタギの先祖になった、という伝説が記されている。
 現実のマタギたちもこれを持てば、どこの山野でも自由に狩りができる特権が証明されたという。また、中にはマタギ特有の呪文が書かれているものもある。
 巻物の中身は絶対に他人に見せてはいけないといい、山の神の祭日にも開かなかったという。よってたいていは巻物を木箱や革袋に入れて神棚の奥に大事に祀(まつ)ってきた家が多いが、世代を経ると子孫たちにとっては中に記されている呪文について、ほとんど忘れられてしまっていた事例もあった。

(県立郷土館主任学芸主査 小山隆秀)
by aomori-kyodokan | 2015-07-16 10:46 | ふるさとの宝物
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