絵馬に奉納者名を書き入れてもらう
絵馬を拝殿で祈祷してもらう人たち。中央は牛の絵馬
本県の南部地方は、古くから馬産地として知られてきました。おいらせ町上久保の
氣比神社は、「木ノ下のお蒼前様」とも呼ばれ、馬の守護神である蒼前神にたいするあつい信仰を集めてきました。
以前は、旧歴6月1日と15日が祭日で、南部地方だけでなく津軽地方や北海道、岩手県、秋田県、宮城県などからも多くの参拝者が訪れますが、現在は7月第1土曜日と日曜日が例大祭の日となっています。
例大祭に合わせて境内では、絵馬市が開かれます。ここで売られる絵馬は紙製の絵馬で、絵馬を専門に描く「絵馬屋」が店を構え、馬の毛色や頭数を違えた絵馬を一面に広げています。
その中から飼っている馬に似たものを選び、奉納者名などを書き加えてもらってから、神社で
祈祷してもらいます。絵馬は神社に奉納するのが普通ですが、ここの絵馬は家に持ち帰り、馬屋などに貼って飼い馬の無病息災や多産を祈願します。
写真は1966(昭和41)年7月の例大祭当日、絵馬を購入し拝殿で祈祷してもらう様子を撮影したものです。当初は馬の絵馬がほとんどでしたが、酪農や養豚、養鶏が盛んになるにつれて、次第に牛や豚、鶏など様々な絵馬が奉納されるようになりました。
氣比神社に見られるような絵馬市は、全国的に見ても貴重なもので、「氣比神社の絵馬市の習俗」として文化庁より2009年に「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択されています。
(県立郷土館・昆政明、差伸はいずれも野坂千之助氏撮影)