人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

青森県立郷土館ニュース

kyodokan.exblog.jp

土曜セミナー配付資料ー島口 天「東岳とその周辺の鉱山史」

2012年1月28日

1 東岳はどんな山?
 東 岳(あずまだけ)
・ 位 置:青森市東部
・ 標 高:684m
  ・ 山 容:特に高い山頂がない屏風のような形。砕石跡が目立つ。
       青森県の民話(簡単に)
 昔、東岳と八甲田山はとても仲が悪く、いつもけんかばかりしていました。ある日、とうとう怒った八甲田山は、刀で東岳の首を切ってしまったそうです。切られた首は空を岩木山まで飛んでいき、岩木山の肩のところにのったそうです。それ以来、東岳の山頂部分は平らで、岩木山の肩にはコブがついています。
・ 地 質:非常に固い中生代の地層が帯状に分布しており、これが山容の成因となっている。
・ 利 用:青森市観光課が整備した自然歩道があり、ハイキング気分で登山が楽しめる。途中には石灰岩の鉱山跡があり、青森市が一望できる展望所がある。

2 東岳の鉱山史
 東岳には、中生代の石灰岩を採石する鉱山があったほか、石灰岩と熱水が大規模に反応して生成された銅・鉄鉱石を採石する鉱山が複数存在した。石灰岩と反応した熱水は、地下のマグマが冷え固まって花崗閃緑斑岩・花崗閃緑岩となる際に、マグマから分離した熱水やマグマによって熱せられた地下水と考えられる。
 ◎ 同和鉱業野内採石所(石灰岩)
  大正3年 秋田県の小坂鉱山に石灰石を送鉱する目的で開発された。
  大正5年 野内駅まで4,784mの索道が架設された。
  昭和34年 休山。
  ※ 同和鉱業㈱は、昭和20年に㈱藤田組が商号変更した会社で、平成18年にDOWAホールディングス㈱に社名変更して現在に至る。
  ※ 東岳自然歩道沿いにはディーゼルエンジンや軌道(線路)跡、火薬庫跡などの産業遺構が残されている。また、旧野内駅にも選鉱場跡が残っている。
 ◎ 東岳鉱山(銅・鉄鉱石)
  昭和13年 大日本鉱業㈱が初めて試採。
  昭和18年 本格的に探鉱を開始。
  昭和27年 滝沢の工藤等が小規模に採掘を始め、2年間に銅鉱石を8t 採掘し、大日本鉱業椿精錬所(秋田県)に送鉱。
  昭和29年 鉄鉱石を採掘し、2年間に約400t を富士製鉄室蘭製鉄所に送鉱。
  昭和30年 休山。
  ※ 大日本鉱業㈱は、㈱藤田組を退社した小坂鉱山所長の武田恭作によって創設された武田鉱業本店が前身。
  ※ 富士製鉄㈱は、昭和25年の財閥解体で日本製鉄が4社に解体されたうちの1社。昭和45年に八幡製鉄と合併して新日本製鉄になった。
 ◎ 東栄鉱山(銅・鉄鉱石)
  明治36年に北海道製鉄㈱が鉱業権を設定し、大正6年に同社が東嶽鉄山として採石を始め、上ノ沢鉱床と大滝鉱床の一部から、大正8年までに約3万tの鉄鉱石を出鉱したが、その後休山した。
  大正15年に高谷由吉が上記鉱区とその周辺部を統合して試掘権を得、番屋鉱床付近の探鉱を実施。
  昭和11年 鉱業権が関規方に移り、東栄鉱山として開発が進められ、昭和20年まで銅鉱石を約6千tを出鉱した。昭和12~13年に青森石灰工業㈱が石灰石を1千t採石したほか、関も同15~16年に1万2千tの石灰石を採石した。
  昭和20年 休山。
  その後も探鉱は小規模に続けられ、昭和25年に大滝鉱床で鉄鉱体を確認し、東栄鉱山㈱が設立されたが本格的な操業に至らず、同26年に東奥鉱業㈱に譲渡されて月光鉱山と改名し、鉄鉱石を採探鉱した。同鉱山は同30年に休山したが、同31年には日鉄鉱業㈱が共同権者として加入して探鉱を続けた。

3 東岳周辺の鉱山関連事項
 ◆ 東岳南東麓には上北鉱山から野内港へ延びる索道が通っていた。
 ◆ 東岳南東麓の滝沢には高森鉱山の選鉱場があり、高森鉱山からそこまでは索道が、そこから浪打駅までは軌道が延びていた。
   ※ 上北鉱山も高森鉱山も上北郡旧天間林村の大坪川上流域にあった。
 ◎ 高森鉱山
  昭和10年から高森鉱山㈱が経営。
  青森市からの送電設備、浪打駅を起点とする鉱石搬出用軌道及び索道の建設、更に青森駅構内における鉱石搬出用軌道の計画、従業員の住宅・病院・小学校等の充実をはかる。
  浪打駅で貨物の取り扱いが始まったのが昭和15年であることから、それまでに索道・選鉱場・軌道が完成したと思われる。ただし、昭和18年夏には軌道が使われていない。
 ◎ 上北鉱山
  昭和11年に日本鉱業㈱が三井栄一から経営委託という形で本格的に操業を開始し、昭和15年に日本鉱業㈱の単独経営となった。
  昭和16年に高品位銅鉱床が発見され、当時の銅鉱の生産量は日本一といわれた。
  上北鉱山の索道は、野内港までの長さ約19kmが昭和13年に完成した。野内駅に向かう分索は昭和15年に建設された。
  ※ 高森鉱山は、上北鉱山に吸収合併された可能性がある。

土曜セミナー配付資料ー島口 天「東岳とその周辺の鉱山史」_b0111910_1353715.jpg


文 献
島口 天(2011)青森市東岳における鉱山史.青森県立郷土館研究紀要,35,p.9‐14.
※ 当館ホームページからダウンロードできるほか、図書館でコピーサービスを受けられる。
by aomori-kyodokan | 2012-01-31 10:35 | 土曜セミナー
<< 写真で見るあおもりあのとき 第... 写真で見るあおもりあのとき 第... >>