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喧嘩するねぷた・ねぶた 第11回「楽器で相手と対抗 /青森 」

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↑「つがる市ネブタまつり」で披露される喧嘩ばやし。現在はねぶたが集結して、喧嘩ばやしを奏でる場面が用意されている=つがる市商工会提供




 前回は、ねぷた・ねぶた喧嘩(けんか)において楽器が使われたケースを紹介した。そして、祭ばやしによる喧嘩では、太鼓が主役となることなどを述べた。今回は、現在に残る「はやしの喧嘩」を紹介する。

 津軽平野において「はやしの喧嘩」をする祭りとしては、旧木造町(現つがる市)のねぶたや、鰺ケ沢町のねぷたなどが挙げられる。これらの地域では、他の町会のねぷた・ねぶた同士で接近し、双方ともに激しく太鼓をたたき合ったり、笛や鉦(かね)を鳴らしたりするという行為が現在も行なわれている。私は幸運にも両方の祭りに、はやし方で参加させていただいた。観光化の進んだ都市のねぷた・ねぶたとは一味違う、真っ赤な炭火のような原生の鼓動を感じた。

 旧木造町では「喧嘩ばやし」が有名だ。たたき方のテンポをずらして相手を崩したり、持久戦に持ち込んだりすることもあるようだ。現在は広場に集まった各団体が、喧嘩ばやしを順次披露している。合同運行を終え、各ねぶたがそれぞれの町会に戻る際には、道すがら、ねぶた同士が接近し、はやし対決をすることもある。見ている側の気持ちも、さらに高揚してくる瞬間である。

 一方、鰺ケ沢町では「とまれの太鼓」または「喧嘩太鼓」とも呼ばれているはやしがある。運行形態の自由度が高い鰺ケ沢では、他の町会のねぷたとの遭遇のチャンスをうかがいながら、夜道の運行を進めていくようにも感じられる。このあたりが、かつての喧嘩ねぷたを想起させるところでもあり、祭りの醍醐味(だいごみ)の一つであろう。

 これら両地域で行われる喧嘩のはやしは、活気あふれる勇壮なものである。「喧嘩」に勝敗の判定をつけることはない。けれども、人々は相手の太鼓に負けじと、全身をぶつけるようにしてばちを太鼓の皮にたたきつけ、打ち鳴らす。はやしで対向する「喧嘩相手」が現れることにより、祭りに活気が生まれ、人々の絆も深まっていく。

 祭ばやしを伴う模擬戦的な喧嘩の習俗は、県外の他の行事でも数多く行われてきた。例えば、岩手県三陸地方の「けんか七夕」である。「けんか七夕」は今回の震災で開催が絶望視されたが、祭りを愛する人々の努力により開催された。模擬戦としての「喧嘩」という儀礼的行為には、人々の心の交流を深め、生きるための活力を与えるという社会的な機能があるのではないか。県内に今も息づくねぷた・ねぶたの気質にも、そのような気概や情熱、愛情が生きている。ねぷた・ねぶたばやしが聞こえてきたら、内なる感情の高ぶりにこそ、耳を傾けてみたい。
(民俗音楽学研究者・下田雄次)

出典=毎日新聞青森版 平成23年9月22日(毎日新聞社許諾済み)
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by aomori-kyodokan | 2011-09-22 09:15 | 喧嘩するねぶた・ねぷた | Comments(0)
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