上の写真は昭和30年代前半に弘前市久渡寺付近で撮影されたものです。大工さんが使うカンナをひっくり返したような木製の台の上で、お婆さんが右手に氷の固まりを持ち、前後に氷を滑らせ、刃によって削り取られたかき氷を、左手に持った容器入れているところです。現存するかき氷の機械を観察すると、かき氷を受け取る容器は左側からしか入れられないようになっているので、左利きの人には不向きな作りとなっています。
画面右側にある大きなガラス容器は、タライに入れられているので、おそらくはかき氷のシロップを入れるものと思われます。
下の写真は昭和33(1958)年に三沢市内で撮影されたものです。先の弘前市内で用いられていたやり方とそっくりです。このように、昭和30年代前半までは、青森県内では、カンナをひっくり返したようなタイプのかき氷器が主流だったようです。
注意しないと見過ごしてしまうありきたりの写真も、資料を丹念に集め、注意深く観察していくと、私たちの先人の暮らしぶりが具体的に見えてきます。皆様方からの資料提供をお待ちしています。
(青森県立郷土館 相馬信吉)
(上の写真は佐々木直亮氏撮影、下の写真は野坂千之助氏撮影)