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青森県立郷土館ニュース

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「北斎の富士」新聞連載 第4回「諸人登山」

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 古代には富士の山自体がご神体であり、人々は登らずに遠くから拝む信仰がありました。やがて山麓の中部地方や関東地方に、富士山を拝む浅間(せんげん)神社が建立され、御師(おし)たちが各地に布教を始めました。

 江戸時代になると信仰は庶民にも広がり、富士講が結成され、旧暦7月22日から8月22日まで富士山登拝が行われるようになりました。北斎が生きた18世紀半ばから19世紀半ばは、江戸市中で富士講が爆発的に流行して、八百八講が生まれたといい、講結成の禁令が出された時代でした。

 富士講の人気のひとつに、六十年に一度、女性が途中まで登山するのを認めていたことがあります。彼は「木花開耶姫命」(「富嶽百景 初編」図1)「孝霊五年不二峰出現」(同図2)「役ノ優婆塞富嶽草創」(同図3)で、富士山の神々や伝説を描いていますが、特に「諸人登山」(「富嶽三十六景」図46)「不二の山明キ」(「富嶽百景 初編」図5)「辷り」(同図6)「不二の室」(同二編図46)などでは、白装束に金剛杖を持ち不二(富士)講の笠をかぶった参詣者たちの姿と、近世から整備が進んでいた参詣道と、道中各所に設置された室(山小屋)の様子、下りの躍動感など、当時の民衆による登拝習俗を生き生きと描いており興味深いです。

 このような白衣で六根清浄を唱える登拝や、老若男女が本山登拝の代わりに登った富士塚の建立などは、本県の岩木山「お山参詣」で、近代以降に流行した白装束と模擬岩木山習俗と似ているといえます。
(県立郷土館学芸主査 小山隆秀)

※現在、青森県立郷土館では東奥日報社と共催で「北斎の富士」を下記のとおり開催しています。これに関連して、紙上に10回にわたって、見どころを紹介する記事を掲載する予定です。ご期待ください。

□期日 10月30日(土)~12月5日(日)
□時間 10月30日・31日は9時~18時(入館は17時30分まで)
      11月1日以降は9時~17時(入館は16時30分まで)
□会場 当館1階特別展示室(大ホール)
■料金 一般・大学 800円(600円) 中学・高校 400円(300円)
      小学生以下は無料 ※(  )は前売りおよび20名以上の団体料金
■問い合せ先 東奥日報社・読者事業局事業部
〒030-0180 青森市第二問屋町3-1-89 電話=017-739-1249 FAX=017-729-2352
by aomori-kyodokan | 2010-11-22 10:01 | 北斎
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