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青森県立郷土館ニュース

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妖怪展展示解説 第2回 「異形の神仏-鬼神・水虎様-」

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↑「大江山酒呑童子絵巻」 国立歴史民俗博物館蔵

 日本民俗学の祖-柳田國男は、妖怪は信仰を失った古い神々が落ちぶれたものではないかと考えました。確かに神仏のなかには、柔和な存在ばかりではなく、ときに怒り、恐ろしい魔力を発揮する異形の神仏たちがいます。例えば鬼です。

 平安時代の鬼は、魔と神の両面を持つ存在と信じられていましたが、長い歴史のなかで酒呑童子や土地の神としての鬼、地獄の鬼など、様々な鬼が生まれました。

 青森県内でも七戸町千曳神社や佐井村箭根森(やのねもり)八幡宮の鬼退治伝説、鰺ヶ沢町大然の鬼田、十和田や西の嶽(八甲田山)の鬼女など、たくさんの鬼伝説があります。なかでも岩木山麓では、古代に退治された鬼の伝説や、鬼神(おにがみ)様の信仰が受け継がれてきました。

 「妖怪展」では百沢寺(ひゃくたくじ-岩木山神社の前身)を百沢の地へ導いてきた太田家が退治したといわれる、鬼のアゴ(またはヘソ)を封じ込めた箱を公開しております。代々、御神体として同家で祀ってきたもので、江戸時代の旅行家菅江真澄(すがえますみ)も記録しています。

 ふたを開けると神罰が下るそうですが、明治初期に津軽藩主家の希望で開けたところ、実際に「ヘソの干し物」が入っていたといいます。

 水虎(すいこ)様は、西北津軽地方の新田地帯で崇拝を集めてきた水神です。青森県内では近世から、川や沼で人の命をとる河童やメドチが出没していた記録がありますが、明治期につがる市の実相寺が水神を、水難事故から子供らを守ってくれる水虎大明神として祀ったもので、周辺にもその信仰が広がりました。同市亀ヶ岡集落では近年まで毎年、人を水難に誘う水神様(またはスイコ様)を鎮めるため、人形や供物を乗せた小舟を流して神に捧げる「舟流し」という行事を行っていました(櫻庭俊美氏の調査による)。
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↑「水虎大明神像」 実相寺蔵

  (当館学芸主査 小山隆秀)
by aomori-kyodokan | 2009-09-23 10:27 | 妖怪
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